2022年秋アニメの中でも最も注目を集めている【チェンソーマン】。
原作は豪快なアクションが目を引きますが、実は至る所に伏線や謎が隠されているのはご存知でしょうか?
その謎の1つに、原作のコマがあります。
このコマというのは、よく見ると黒枠と白枠がの2種類に分かれています。
この色分けが、「過去」と「現在」の2つの世界を示しているという伏線です。
さらに、それだけはなく「パラレルワールド」や「無限ループ」の世界観も表しているという推測もされています。
この枠を知らずして読み進めるのと、しっかり意識をしながら読むのでは入ってくる内容もかなり変わります。
では、この描写方法にはどのような意味があり、何を表しているのでしょうか?
ここでは、この黒枠と白枠の謎について考察を加えていきたいと思います!
- 「黒枠」と「白枠」の謎
- 「黒枠」と「白枠」の意味
- 黒枠の中で表現がおかしくなっているシーン
※考察が進み、少し冗長になってしまう癖が出てしまったので、チェンソーマンが本当に好きな方だけご覧下さい
黒枠白枠は前の世界と現在?
チェンソーマンで「黒枠の時は以前のループの情景」という考察を聞きました pic.twitter.com/esgZauRJ6u
— ナナイ👹😺🐷🐴 (@nanaisino) October 25, 2020
マンガ好きな方はご存知かもしれませんが、多くのマンガはコマを黒枠と白枠に塗り分けることで、時間や世界観の差異を表現する方法をとっています。
【チェンソーマン】でも、そうした表現が見ることができるのですが、これは一体何を表しているのでしょうか?
過去、つまり前の世界と現在の世界を表しているのがどうか。
確かに、よくよく見ると黒と白のシーンでは関係性がなく繋がっていないようにも感じます。
ここを、うまく1つのストーリーとして構成されているタツキ先生が素晴らしすぎることは、言うまでもありません。笑
そして、この伏線に気付いたファンの方たちも相当な猛者です。
ここでは、黒枠と白枠のシーンを振り返ってみることで、何を表しているのかを考察していきましょう!
チェンソーマンでは黒枠と白枠の2種類の表現方法がある
【チェンソーマン】では、コマの外枠を黒枠、あるいは白枠で表現する2つの表現方法が見られます。
この表現方法は、ほとんどの作品では黒枠が「過去」を、白枠が「現在」を表しています。
物語の途中で黒枠のシーンが挿入されると、それはほとんどが回想シーンであることが多いのです。
つまり、「過去」を描いているのですね。
このマンガ表現は、多くの読者に共有されているルールとも言える表現方法でもあります。
この表現方法は、手塚治虫によって初めて実践されたと言われています。
さすが、マンガ草創期の巨匠の表現だと感嘆しますよね!
昨日漫画家さんと話したけど、漫画表現ってホント面白いなーって思ってて。
背景を黒枠にして過去回想を表現したり。
小さい白いコマをいくつか置くと、場面が飛んだことを表したり。だれが考えたんだろ、すごすぎん?
(調べたら黒枠で過去は手塚治虫だった・・・納得)— 謳歌Ouka@ショーと動画 (@performerouka) May 9, 2019
現在の若い漫画家さんにも、手塚治虫の影響力は大きくチェンソーマンでもその影響を見てとることができます。
今回この記事で見る、黒枠と白枠の表現もその1つですね。
一体どういうことなのか、詳しく見ていきましょう↓↓
黒枠は「別の世界」白枠は「現在」を示す
チェンソーマンでも、黒枠が「過去」を、白枠が「現在」を表現しているようです。
ですが、よくよく読み込んでいくと、この黒枠と白枠には他にも意味があるように感じます。
実は、単純に「過去」と「現在」だけを表現しているとは思えないような表現がなされているのです。
黒枠で表現されているシーンが、白枠での表現と微妙に異なる事実が描かれていることがあります。
その表現は、物語冒頭から終盤まで至る所に散りばめられています。
ただの間違いや、ミスリードなども考えられるのですが明らかにおかしなシーンも確認できました。
白枠が「現在」を表していることは間違いないのですが、黒枠は単純に「過去」を表しているだけでなく「別の世界」を表しているのではないかと考えられるのです。
ここからは、そのように考えられる要因となる考察材料「10シーン」を振り返ってみましょう!
材料① デンジの「魔人を知っている」発言
まず1番目に、デンジの「魔人を知っている」発言について振り返ってみてみましょう!
単行本1巻/第4話「力」では、デンジがアキに連れられて魔人の討伐に向かうシーンが描かれていました。
この白枠で描かれたシーンで、デンジはアキに「魔人ってナニ?」と質問しています。
これに対して、アキは「人の死体を乗っ取った悪魔」だと説明するのですが、実はもっと前のシーンで「デンジは魔人を知っている」という発言をしているのです。
それは、同じく単行本1巻/第1話「犬とチェンソー」の黒枠のシーン。
ポチタがまだデンジと一体化せず、2人で暮らしていた時の回想として描かれたシーンです。
デンジは、自分が死んだ後のポチタを心配して「悪魔には……死んだ人の体を乗っ取れるヤツもいるらしい」と言うのです。
それができるのなら、ポチタに自分の死体を乗っ取って「普通の暮らしをして普通の死に方をしてほしい」と夢を託すシーンですね。
- 【黒枠】第1話のデンジ「魔人を知っている」
- 【白枠】第4話のデンジ「魔人を知らない」
1度読むだけでは分かりませんが、繰り返して読むと明らかにおかしなシーンであることは間違いありません。
なぜ、悪魔が死体を乗っ取っることができると知りながら、アキに魔人について聞いたのか。
黒枠のシーンでは「魔人」という言葉は出てこないので、「ニュアンスの違いではないか」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、こうした微妙な表現の揺れを修正してマンガは刊行されます。
週刊時点ではまだしも、単行本刊行時点でこうした表現がされているのは、作者の意図ではないでしょうか。
そう考えると、黒枠の「別の世界」では、デンジは魔人について知っており、白枠の「現在」の世界線では、デンジは魔人を知らないということになるのです。
材料② 荒井ヒロカズの死とコベニ
1番目のシーンよりさらに明らかにおかしなシーンが「荒井ヒロカズの死とコベニの描写」です。
単行本4巻/第28話「秘密と嘘」で、荒井ヒロカズの死亡シーンが黒枠で描かれています。
黒枠内では、背後から喉元を銃で撃たれた荒井が、コベニを庇って死んでしまうシーンがありました。
そこでは、2発目の銃弾は荒井の前頭部を打ち抜き、その返り血をコベニが浴びてしまうところまでが描かれていました。
今週のチェンソーマン感想。
新人2人、ここで株を上げてくるのか……荒井の死に様、瀕死の状態から咄嗟に女の子を庇うとかもう終身名誉童貞だよ
コベニちゃんの戦い方もスタイリッシュに泥臭いし最の高かよ
今wjで一番先が気になるわ#wj31 #チェンソーマン pic.twitter.com/VGy0Mgw9bn
— 俺の股間が王元姫 (@kokan_oh_genki) June 30, 2019
しかし、その数ページ後、コベニの回想シーンが白枠で描かれています。
そう、ここでの回想シーンは黒枠ではなく「白枠」で描かれたのです。
明らかに、黒枠とは異なる表現方法で使い分けられているのですが、そこで描かれたのは荒井の死体。
黒枠では喉と額に銃弾を受けていたにもかかわらず、白枠で描かれた死体には、喉元の傷が描かれていなかったのです。
喉に銃弾を受けていれば、襟元も血で汚れるはずですが、そうした描写もありません。
真面目な荒井が死に際にコベニちゃんを庇って最期に漢を見せたの切ないな。
正直格好良いと言えない荒井の死に顔…唐突に終わる人間の人生に藤本タツキの死生観が見えて痺れる。
少年ジャンプは本当にチェンソーマンが飛び抜けて面白い。
少年漫画のフォーマットに映画や海外ドラマ的なセンスが輝く。 pic.twitter.com/ufHqpHmAcy— レバオン (@continental_777) July 3, 2019
また、黒枠内で返り血を浴びたはずのコベニでしたが、白枠内で描かれたコベニは顔にも、シャツにも全く返り血を浴びていませんでした。
白枠の回想シーンでも、倒れた荒井の背中側、かつ血が飛び散っていない方向に立っており、明らかに黒枠内と位置関係が異なるのです。
荒井のシーン
- 【黒枠】第28話の荒井「喉元と前頭部に銃撃痕」
- 【白枠】第28話の荒井「喉元の銃撃痕がない」
コベニのシーン
- 【黒枠】第28話のコベニ「荒井の返り血を受けている」
- 【白枠】第28話のコベニ「荒井の返り血を受けていない」
このシーンでは、黒枠と白枠での描写の違いが明瞭であると同時に、回想シーンが黒枠・白枠どちらの表現方法でも描かれていました。
このことから、黒枠・白枠の表現方法が「過去」と「現在」だけを表しているのではない、ということが示されていると言えるでしょう。
材料③ アキが姫野のバディ5~7人説 (墓石の数)
3つ目の材料は「姫野の亡くなったバディの人数」です。
姫野がアキのバディになったのは、アキが公安に入った頃。
そして、姫野が5人目のバディを亡くした直後のことでした。
そのことが初めて描かれたのは、単行本2巻/第14話「エロキス」。
黒枠内で、姫野とアキが初めて出会った頃のことが描かれています。
そこでは、姫野が5人のバディを亡くしたこと、アキが姫野の6人目のバディであることが明らかにされました。
姫野のバディについて再び描かれたのは、単行本3巻/第18話「チェンソーVS永遠」と第19話「ノーベル賞」の2回。
第18話でアキがコベニに刺された時、彼の死がよぎった姫野のイメージとして、上記のバディたちの墓石が白枠内で描かれたのです。
しかし、亡くなったバディは5人だったにもかかわらず、ここでは6つの墓石でした。
その後、19話で再度登場した墓石は4つ。
これは黒枠内で描かれました↓↓
#チェンソーマン
・姫野のバディは早川で「6人目」
・「永遠の悪魔」戦で早川が死にかけた時、姫野が想像した墓は「6個」
・師匠との回想で出てきた墓は「4個」(佐原、木ノ内、昴、佐々木)姫野の「5人」のバディの内、1人は墓がなく、師匠も名前を出さない。ただし、姫野の中では死んでいる pic.twitter.com/sjN2jQcoZO
— 早坂よもぎ (@yomogi0414) August 15, 2019
これらの表現をそのまま読み解くと、このようになります↓↓
- 【黒枠】第18話の姫野「アキが5人目または6人目のバディ」
- 【白枠】第19話の姫野「アキが7人目のバディ」
「白枠内の6つの墓石は、姫野がアキの墓石も含めてイメージしたからではないか」という反論もあり得ると思います。
ですが、19話での4つの墓石についてはどうでしょうか?
姫野の登場シーンでは、何度も出てくる墓石の数が違うことに、読んでいて違和感を覚えた方も少なくないはず。
1つの絵にも意味を込めるタツキ先生が「意図せずこのような描き方をしたのか?」と、疑問が残ります。
やはり、ここは黒枠と白枠では世界線が異なり、姫野のバディの数も違っていると推測したいところです。
材料④ デンジの父親の死
父親が首吊ってる絵が1話の回想で出てきてるのに最新話だとマキマさんは「父親はデンジくんが殺した」って言って父親が頭から血を流して死んでるのって、描写が矛盾してるんだけど割とマジでデンジくんはポチタに記憶やら人格をいじられて悪魔から天使になったのではないか。俺も天使になりて~~な。 pic.twitter.com/zQK5FF9ePy
— いけとも (@ike_tomo) September 1, 2020
4つ目に見るのは「デンジの父親の死を描いたシーン」です。
デンジの父親は、物語の冒頭では首を吊って自殺したとされていましたが、実はデンジが殺したことがマキマによって明らかにされています。
ただ、単行本1巻/第1話「犬とチェンソー」では、黒枠で父親が首を吊ったコマが描かれていましたよね。
- 【黒枠】デンジの父親「首を吊る」
- 【終盤】デンジの父親「デンジが殺したことになっている」
このコマは、デンジが父親殺しの記憶を無意識で忘れるようにしていたことが要因だと考えられるでしょう。
ですが、ここで考察しているように黒枠が白枠とは異なる「別の世界」を表現しているとするならば、父親の死の描写も意味が変わってきますよね。
もしかすると、「別の世界」ではデンジは父親を殺していないかもしれないのです。
材料⑤ 森の中のパワーとニャーコ
5つ目は「森の中のパワーとニャーコの姿」です。
まだパワーがマキマに捕まる前、ニャーコと出会い、共に森の中で暮らしていた時を描いたシーンです。
このシーンは、単行本1巻/第7話「ニャーコの行方」と、第9話「救出」で描かれました。
ここでは、森の中で暮らすパワーとニャーコが描かれたのは、全て黒枠内でした。
黒枠内ではパワーは裸で泥だらけ、長い髪の毛もボサボサの野生児のような格好。
ですが、唯一白枠で描かれた第9話の表紙では、パワーの体はとても綺麗で野生児という雰囲気はありませんでした。
白枠で描かれたニャーコが丸く太っているので、2人が出会ってからしばらく経過した後だと分かりますね。
- 【黒枠】第7話のパワーとニャーコ「泥だらけで汚いパワーと普通のニャーコ」
- 【白枠】第9話のパワーとニャーコ「綺麗な姿のパワーと太っているニャーコ」
黒枠では泥だらけだったパワーが、なぜこのカットだけ綺麗になっているのか。
「表紙だから」という理由にしては、不可解ですよね。
黒枠の「別の世界」では泥だらけでしたが、白枠の「現在」では、綺麗な姿なのではないでしょうか?
材料⑥ 少年デンジの腕の影がチェンソー化
6つ目のシーンは、単行本10巻/第82話「朝食はしっかり」で描かれたデンジの過去の描写です。
ここでは、マキマに暴かれたデンジの父殺しの過去が描かれました。
血を流して死ぬ父親の死体の前で、立ちすくむ少年デンジの影。
デンジの影がチェンソーになってる!#チェンソーマン #wj39 pic.twitter.com/Yf6wedcNIb
— チェンソーマン情報😎コーニシ (@konishi_ch) August 31, 2020
黒枠で描かれたこのシーンで、地面に伸びた影の腕がチェンソーになっているのです。
これは明らかにおかしな描写ですよね。
父親が死んだのはポチタと出会うより前なので、少年デンジの腕がチェンソーになっているはずがありません。
- 【黒枠】第82話の少年デンジ「腕の影がチェンソー化」
- 【本来】少年デンジ「まだポチタと出会う前なのでチェンソー化はありえない」
しかも、チェンソーになっているのはデンジの体ではなく、影だけ。
これは何らかの意味があると考えて間違いないでしょう。
黒枠で描かれているので、「別の世界」ではこの時すでに、ポチタの干渉があったことを示唆しているのではないでしょうか。
材料⑦ パワーの4本ツノと血抜き
次は「4本のツノが生えたパワー」の描写です。
単行本5巻/第38話「気楽に復讐を!」のラストと、続く第39話「きっと泣く」の冒頭で、4本のツノが生えたパワーが登場します。
傲慢で恐ろしい悪魔になってしまうことを防ぐため、定期的に血を抜いているパワー。
ですが、ゾンビとの戦いで血を飲みすぎたことにより、いつもよりツノが増えてしまったのですね。
4本もツノが生えている状態では生活できないため、血抜きをしなければならず、パワーはデンジのバディから外されてしまいます。
この白枠で描かれたこのシーンから、パワーはしばらく本編に登場しません。
ただ、第41話「嵐の前」の黒枠で描かれた回想シーンで、再び4本のツノが生えたパワーが描かれました。
それは、マキマとアキが天使の悪魔がはついて話しているシーンでした。
その時、別室にいる天使の悪魔と共に描かれたのが、4本のツノのパワーだったのです。
サラリと一読すると、血抜きのためにデンジから離れたパワーが、公安の施設内で天使の悪魔と遭遇したのかと思います。
アキがパワーと「今日の朝も殴り合いの喧嘩してますよ」と話していることからも、時系列的にはデンジと別れた直後だと考えられます。
ですが、深く読み込むと微妙におかしな部分がいくつかあります。
まず1つ目のおかしな点は、パワーは普通に天使の悪魔と会話しているように見えること。
4本のツノが生えた状態だとマズいため、血抜きをする必要があったにもかかわらず、天使の悪魔と会話しているパワーは特にいつもと変化がないように見られます。
さらに、それを見たマキマも特に関与することもなく、流していました。
パワーが四つ角になったときは血抜きをしなければならないのに、黒枠の中では普通に天使の悪魔と喋っている。 pic.twitter.com/YxY1PZDkdm
— き (@pdUgqzM17hWHlaL) June 9, 2021
2つ目のおかしな点は、アキとの喧嘩です。
パワーの4本のツノが生えたのは、サムライソードの戦いが終わった翌日のことです。
戦いの打ち上げとして、デンジ・アキ・パワーの3人で宴会をして、そのまま眠りにつきます。
翌朝に目が覚めると、デンジがパワーの異変に気付きました。
すぐにマキマに見せるために公安に向かったようなので、その間に「アキと喧嘩する余裕があったのか?」という疑問が浮かばないでしょうか。
もちろんパワーのことなので、些細なことで殴り合いの喧嘩にまで発展した可能性はあります。
ですが、さらにおかしな3つ目の点があるのです。
それは、殴り合いの喧嘩をしたアキの右頬の怪我が、その1ページ後には綺麗に治っている点です。
- 黒枠ではパワーが血抜きをしておらず4本ツノのまま
- 血抜きというイベントがあったことでアキとパワーに喧嘩をする時間はなかったはず
- パワーと喧嘩をしたアキの右頬の怪我が治っている
単行本収録時にも直されなかった怪我の有無。
妙だとは思いませんか?
白枠内のアキにも怪我の描写はないため、黒枠の一部分だけ怪我が描かれているのです。
ここからは、黒枠と白枠が「別の世界」であるだけでなく、そのパラレルワールドが現在進行形で同時に描かれている可能性が考えられるのです。
材料⑧ ドイツのサンタクロースが依頼を受けるシーン
8つ目は、刺客編でドイツのデビルハンター「サンタクロースがデンジ殺害の依頼を受けるシーン」です。
今回のチェンソーマンで背筋にゾクッと来た、ドイツのサンタクロースが依頼を請け負う所。
淡々とした会話の中に凄味と変態性の調和、藤本タツキ節の真骨頂という感じ。
あのマキマさんと岸辺が一目置く存在。
老人キャラを描ける漫画家は一流の証。#チェンソーマン #藤本タツキ #少年ジャンプ #wj08 pic.twitter.com/bl51EOPXyL— レバオン (@continental_777) January 21, 2020
このシーンは、単行本7巻/第54話「江の島にいくには」の白枠。
さらに単行本8巻/第64話「ウェルカムトゥーザヘル」の黒枠で描かれています。
同じ場面を描いたシーンですが、白枠と黒枠で2つの相違点が見られます。
1つ目は、新聞の記事が異なる点。
サンタクロースが読む新聞の記事デザインが、白枠と黒枠で全く違うものとなっているのです。
そして2つ目が、サンタクロースと依頼者の男の会話の違いです。
サンタクロースが要求した報酬を、依頼者の男は白枠では「……用意する」と答えているのに対し、黒枠では「わかった用意する」となっているのです。
- 【黒枠】第64話の老人と依頼者
- 【白枠】第54話の老人と依頼者
=「新聞の記事が異なる」「依頼者の返答が違う」
「わかった」というセリフ自体は重要ではないですが、あえて黒枠で描いたことが肝だと感じます。
おそらく、違う返答をさせることで「別世界」だという伏線にしたかったのでしょう。
この2つの描写から、白枠と黒枠が全く異なる世界線であり、同じ場面を描いたシーンではないと言えるでしょう。
材料⑨ 日下部と玉置のリーダー変更
9つ目も同じく刺客編での「デンジの護衛をリーダーとして指揮していた人物の変更」です。
宮城公安からデンジの護衛のために派遣されたのは、日下部と玉置の2名でした。
単行本7巻/第55話「レッツゴー」で、黒枠で描かれた自己紹介のシーンでは、日下部が護衛の指揮をとることが明言されています。
ここでは、玉置は日下部のバディとして自己紹介していました。
ですが、白枠内で実際に指揮をとっているのは玉置だったのです。
日下部が話すシーンが多いため見逃しがちですが、攻撃や撤退などの指示を出しているのは全て玉置で、日下部は一切指示は出していません。
黒枠では日下部がリーダー 普通の枠では玉置がリーダーで指示を出し、ミッションの解説までしている。 pic.twitter.com/wCQ100rJID
— き (@pdUgqzM17hWHlaL) June 9, 2021
決定的なのは、単行本7巻/第59話「めちゃくちゃ」で、玉置がデンジを囮にしていたことを謝罪したシーンでしょう。
作戦全体の方向性を謝罪するのは、作戦指揮者が行うべきものですよね。
黒枠で日下部がリーダーとして発言していましたが、白枠でもそうだったとするなら、ここで彼が謝罪しないのは明らかに不自然です。
- 【黒枠】第55話「日下部がリーダー」
- 【白枠】第59話「玉置がリーダーとなっている」
ここから、黒枠内では日下部がリーダーでしたが、白枠内では玉置に変更されていると予想できます。
材料⑩ 誕生日会で未来を思い出すデンジ
最後に見るのは「誕生日会で未来を思い出すデンジの描写」です。
単行本10巻/第81話「おてて」は、マキマによってパワーが殺された衝撃的な回でしたよね。
マキマに「デンジ君がドア開けて。私がパワーちゃん殺すから」と言われ、戸惑いながらも扉を開けるデンジ。
ドアを開けるまでのデンジのモノローグは、やや不可解なものとなっています。
「ドアを開けたらパワーが笑ってて クラッカーを鳴らしてくるんだ そんでケーキを持ってて……あれ?なんでケーキ持ってんだ?あ……オレ明日誕生日じゃん……」
こうしたモノローグの後、ドアを開けた向こう側には、両手で誕生日ケーキを持ったパワーが立っていたのです。
このシーンは、全て白枠で表現されていますが、改めてモノローグを見てみると、時系列がおかしなことになっているのに気付くはずです。
パワーがドアの向こうに誕生日会の用意をして立っているなど、それまでの情報では全く想像できません。
にもかかわらず、ドアを開ける前に、デンジはパワーが誕生日会のために立っていることを思い出しているのです。
【チェンソーマン】デンジくんの脳内に突如溢れ出す存在しない未来――クラッカーを鳴らしケーキをあげるパワーちゃん。マキマさんが彼に植え付けた虚実なのか?明日誕生日なのはデンジくん自ら気付いた?一体どちらなんだ。誕生日忘れたり嘘だったりしたのなら彼も記憶操作可の証明ですね…#WJ38 pic.twitter.com/QMcZAjZyEv
— 空目ハルヒコ Haruhiko Utsume (@el_psy_congroo) August 23, 2020
なぜ、ドアを開ける前にパワーがケーキを持っていることを知っていたのか?
なぜ、未来のことを思い出したのか?
まるで、1度デンジが同じ経験をしたことがあるかのような表現だとは思いませんか?
【別世界】パワーの行動「クラッカーで祝福してくれた」
【白枠】第81話のパワーの行動「ケーキを持っているだけでクラッカーはない」
=本来、白枠ではまだ知り得ぬ出来事をデンジが言い当てた
このシーンは黒枠で描かれることはありませんでしたが、デンジの言葉から想像することはできますね。
黒枠、つまり「別の世界」では、ドアの向こうに立っていたパワーは、ドアが開かれた瞬間にクラッカーを鳴らし、ケーキを持って誕生日を祝ってくれたのだと思います。
実際には、パワーはクラッカーを持っていなかったので、ここでも「別の世界」が白枠の「現在」と微妙に異なっている世界であることが分かりますね。
パラレルワールドや無限ループは?
チェンソーマン読み返してるけど、黒枠の別世界線だとアキは姫野先輩にタメ口なんだな(左が別軸、右が本編) pic.twitter.com/SLscm1L6sg
— ハル (@Haru_SpringUP) June 28, 2021
今まで10のおかしなシーンを見てきましたが、いかがでしたでしょうか?
黒枠を「過去」として考えるには、かなり多くの描写が異なるシーンが多かったですよね。
これは、白枠で描かれた「現在とは違う世界のことを描いている」と考えるべきでしょう。
では、黒枠で描かれた「別の世界」とは何なのか?
それは「パラレルワールド」でしょう!
さらに、その世界は「無限ループ」が繰り返されていると予想しています。
デンジは、この複数の世界の体感を共有していると考察します!
どのような意味なのかを、詳しく解説していきます↓↓
黒枠は「パラレルワールド」だと考察
ここでは「黒枠 =パラレルワールド」であると推測いたします。
パラレルワールドとは「並行世界」という意味を表しており、S F小説などで多用される世界観ですね。
今まで見てきた10のシーンから見ても、黒枠が白枠の過去だという説はかえって不自然です。
- 荒井ヒロカズの傷の描写
- 少年デンジの腕がチェンソーになっていた描写
- ドイツのサンタクロースの依頼シーン
解釈上の相違ではなく、絵の表現が明確に異なっているため「同じシーン」として考えることの方が難しいのではないでしょうか?
もし「同じシーン」でないとするなら、それは「別の世界」のシーンと考えることが妥当です。
つまり、今まで見てきた10のシーンと同じことが「別の世界」でも展開していたということです。
しかも、黒枠内でも描写が異なっている場合もあるため「別の世界」は1つだけでなく、いくつか存在すると考えられます。
今の世界の過去は「横線」または「トーン」で描かれる
しかし、基本的にマンガ表現では黒枠のシーンは「過去」を表すというルールがあります。
黒枠が「パラレルワールド」なら、本当の「過去」はどう表現されているのか?
そういう疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれませんね。
実際チェンソーマンでは、「過去」を表現する方法として、「横線」あるいは「トーン」が使用されているのです。
黒枠が「過去」を表すならば、こうした描写の使い分けは必要ではないはずです。
絵やコマ割りにこだわっている作者だからこそ、こうした使い分けは手癖ではなく、意図的に行われていたと考えた方が自然ですよね。
やはり、黒枠は「過去」ではないと考えるべきでしょう。
デンジだけわずかな記憶を持って無限ループを繰り返している
では、黒枠が「パラレルワールド」であるなら、デンジが何人もいてそれぞれ少しだけ違った同じ人生を歩んでいるのでしょうか?
それとも、1人のデンジが何回も同じ人生を経験した「パラレルワールド」なのか?
それは、先ほど見た10個目の誕生日会のシーンで、推測が可能です。
誕生日会のシーンでは、ドアを開ける前にデンジは未来のことを思い出しています。
つまり、デンジには未来の記憶があったことになるのです。
ここから、いろんな世界が同時に並行しているのではなく、デンジが何度も同じ人生を経験していると推測できるのではないでしょうか。
マキマは2つの世界の情報を共有できる唯一の存在
「パラレルワールド」と現在、少なくとも2つあるこの世界についてマキマは知ることのできていた唯一の存在であったと考えられます。
それは、マキマが知るはずのない、デンジとポチタの関係や契約について知っていたからです。
単行本1巻/第2話「ポチタの行方」で、デンジはマキマに対してポチタのことを「飼ってた悪魔」だと説明していました。
ですが、その説明を聞いたマキマは、ポチタを「キミの親友」だと述べているのです。
また、単行本10巻/第82話「朝食はしっかり」では、デンジとポチタの契約のことを、マキマは知っていたことが明らかになりました。
それまで、デンジとポチタの契約は読者と本人たちのみが知る事実として描かれていたはずなのに、ここで突然マキマが契約の話をし始めるのです。
マキマが小動物の耳目を借りて、契約の内容を知ったのだと考えることも可能ですが、はたしてそれは正しい推測でしょうか?
マキマは契約内容を、デンジが普通の生活をする代わりに、ポチタの心臓をもらうことだと認識していました。
ですが、実際にデンジがポチタと交わした契約は、デンジの夢をポチタに見せることでした。
もしマキマが小動物を介して契約内容を知ったのであれば、なぜこのように間違った理解をしたのでしょうか?
むしろ、マキマが「別の世界」の情報を共有していたからと考える方が自然かもしれません。
別の世界では「普通の生活をすること」という契約が交わされており、そちらの情報を知っていたとするならマキマの誤解も説明がつきます。
デンジとポチタが交わした契約は「デンジの夢を私に見せてくれ」のはずだけど、これは2人の精神世界で行われた会話なので、下等生物の耳を借りるマキマさんは聞けていない。だから過去にポチタとした約束が契約だと思っているって違いが生まれてるんだ。 pic.twitter.com/usk6P4jWov
— ジャンプ俺知ら (@oresira_jump) August 30, 2020
さらに、マキマがこの世から消えた名称・事象を述べたシーンがありました。
第二次世界大戦やナチス、エイズや核兵器のあのセリフです。
あれも、本来チェンソーマンに食べられると存在が消されるという悪魔のルールを無視して、マキマは知っていることになります。
「私しか覚えていない」というのは、言わば「私しか他の世界との情報を共有していない(できない)」ということを示していると思われます。
マキマを倒せたのはデンジが各世界の記憶を得たから
デンジがループを繰り返す「パラレルワールド」だとすると、マキマを倒せたことも納得がいきます。
まず、デンジがマキマを倒せたポイントは3つです↓↓
- ポチタの心臓をブラフにしたこと
- パワーの血を利用したこと
- 攻撃ではなく「食べた」こと
まず、マキマを倒した経緯ですが、デンジはチェンソーマンとなって心臓(ポチタ)をもぎ取り、体内にあるパワーの血でダミーを作ります。
このダミーこそが、マキマ率いる武器人間と戦って負けた正体です。
最後、ポチタの心臓をぎゅっと抱きしめるマキマは、これがデンジだと思い込んでいました。
実際、ポチタの心臓には変わりなかったので、致し方ありません。
そして、死体の山の潜んでいたデンジがむくっと起き上がり、マキマに気付かれないまま攻撃をします。
ここで大きなポイントは、パワーの血を利用したことです。
本来、マキマは致命傷を負っても死ぬことはありません。
ただ、今回の攻撃はパワーの血で作ったチェンソーだったため、マキマの体内で暴れさせたのです。。(チェンソーにはパワーのツノが生えています)
これにより、傷の治りが格段に遅くなっていました。
マキマに反撃されない致命傷を与えたまま、しばらく弱体化させることに成功。
デンジ本人も心臓がない状態だったこともあり、かなりの賭けだったようですが、こちらもパワーの血によって何とか持ち堪えていました。
そして岸辺と一緒に家に連れて帰り、復活できないぐらい小刻みに切って、冷蔵庫にタッパー保存します。
デンジがマキマを倒した方法と言えば、マキマと1つになることでしたよね。
1つになるために、マキマを全部食べてしまったわけですが……この発想、突拍子もなさすぎてびっくりした人がかなりいたと思います。
「マキマさんにゃあ攻撃は通じねえ ふーん!攻撃は通じねえんだ……そこで天才!俺は閃いた マキマさんと俺……一つになりゃあいいんだ……」
というセリフに続く、生姜焼き。
俺も今日はデンジみたいに生姜焼き食べなくちゃ#チェンソーマン pic.twitter.com/lP0NQUzklP
— モコエイト (@mokoeight81226) December 7, 2020
いや、そうはならんだろ、と私はツッコミました。
普通はそんな閃き、出てこないですよね!?
衝撃的で隠喩的な方法だったこと、生姜焼きやその他の料理のインパクトに薄れてしまいますが、まさに悪魔のようなこの発想はどこからきたのでしょうか。
デンジだから、という理由でも納得はできるのですが、それでも「1つになる=食べる」ということには、大きな飛躍がありますよね。
確かにデンジは常識外れで共感力も低く、サイコパス的な側面がありますが、最低限の倫理観や人殺しに対するギリギリの嫌悪感のようなものもありました。
「1つになる」から「食べる」に至るまでの大きな飛躍は、無意識的にでも「パラレルワールド」の他の世界での戦いの記憶を得ることができたからではないでしょうか。
そして、それだけではなく心臓をブラフにしたことや、パワーの血を利用するなど、普段のデンジではそこまでの発想に至らないと思います。
心臓のブラフだけは、その直前のチェンソーマンvsマキマで経験しているので分かりますが、それでも「誰かに教えられる」もしくは「どこかで経験する」しかイメージがわかないでしょう。
デンジはこれを知っていたからこそ、自然にそのような驚きの方法を閃くことができたのだと推測します!
【チェンソーマン】黒枠と白枠の関係性まとめ
黒枠(平行世界)の願いは乗っ取って欲しい。白枠(現在の世界)の願いは心臓をあげるから夢を見せてくれ。微妙に違う。マキマがドアを開けて呼んだのは魔人チェンソーマン、半端に脳が残ってたせいでやることなすことがめちゃくちゃになった。 pic.twitter.com/K44eNuP5sG
— わかば🍞 (@W_K8D) November 11, 2021
→つまりループを繰り返している「パラレルワールド」だと推測 いかがでしたでしょうか? サラリと一読しただけでは分かりませんが、チェンソーマンには微妙に辻褄の合わないことがいくつか表現されています。 それらが今回見た黒枠と白枠なのですが、これは本当に「パラレルワールド」なのでしょうか。 その答えはまだ明らかになっていませんが、現在連載中の第2部でも、コマごとに描写が異なるシーンがいくつか出てきています。 このことからも、チェンソーマンの黒枠と白枠の描写の相違は、意図的であると考えた方がいいですよね! そして今回紹介したシーン以外にも、おかしな部分はあるかもしれません。 じっくり繰り返し読むことで、新しい発見があるかもしれないのがチェンソーマンの魅力の1つです! 一読された方も、ぜひもう一度読んでみてはいかがでしょうか^ ^?