2025年公開予定の続編にも期待が高まるズートピア。公開されてから早8年が経ちましたが、いまだに根強い人気を誇っています。
単純な子ども向けのディズニー映画というわけではなく、大人にも刺さる社会問題を取り上げている作品です。
その中でもメインテーマとして描かれているのが「差別問題」。今回は、ニックに焦点を当てて考察していきます。
- ニックの過去エピソード
- 捻くれ者となった理由について
目次
ニックは幼少期いじめられていた
『ズートピア』のニックって本当いい男すぎるな。普段はワルぶっていて、でも幼少期に負った心の傷を克服できてなくて。過ちを犯した者の真摯な謝罪を受け入れる心の大きさと限りないやさしさを持ったいい男(2回目)!頭ナデナデに悶絶! pic.twitter.com/Z4s9oxBVmw
— ろろ・そぜ (@rorosoze) December 8, 2023
冒頭、ジュディが幼い時のシーンがありますが、そこで強欲なキツネのギデオンが草食動物の子たちのチケットをもぎ取ろうとしてきます。
そんなキツネに、ジュディは果敢に立ち向かいます。
結局チケットは死守できたものの、肉食動物には勝てないというシーンが描かれます。
数年後に、警官となったジュディはキツネのニックと出会うのですが、最初は視聴者にとっても胡散臭いキツネの詐欺師として映ります。
徐々にニックの人となりが明かされていく中で、キツネであるということを理由にいじめられていた過去が明らかになります。
過去① レンジャースカウト
ジュディの足に巻いたハンカチ、実はレンジャーのスカーフなんだ…😭ずっと大切に持ってたニック…尊い💦💦💦
#ズートピア pic.twitter.com/TUtRgKMnsh— カニ岡 モリ美 9/15傷痕愛弍 (@kanioka0522) June 15, 2018
幼いころのニックは、瞳に輝きを蓄え、レンジャースカウトの制服をビシッと着こなすような無垢な少年でした。
レンジャースカウトに憧れて、そこでの楽しい生活を夢見ていたのでしょう。
ところが、そんな純真無垢な少年は、肉食動物のキツネというだけで偏見にあい、卑屈な草食動物たちによっていじめられてしまうのでした。
ニックは当然何も悪いことも、誰かを傷つけるようなこともしていないのですが、キツネだから信用がならない、肉食動物だからきっと本性を現したら自分たちを襲うはずだと、固定概念だけでニックに口を覆う大きな枷をつけてしまうのです。
レンジャースカウトに憧れを抱いていた正義感の強い少年・ニックの心に、この出来事は大きく陰を残すのでした。
過去② 挫折とトラウマを抱える
アイスの棒を「赤杉」だと偽ったのではなく「赤色すぎ」だと言ったのだと主張するニック🦊💬
英語では
「redwood」=赤杉(樹種)🌳
「red wood」=赤い木(色)🌳
スペースの有無で意味が変わる言葉を使った、詐欺のテクニックであることがわかる🤔#ズートピア pic.twitter.com/Qyuz5zMjSy— みゆ@あつ森アンダーテール再現島 (@miyumother) June 15, 2018
レンジャースカウトの経験から、ニックは自分がどのようにふるまおうとも、「肉食動物」であること、「キツネ」であることが自分の行動に影響してしまうことを知ります。
どれだけ善行をしても、「あんなことをしているけれど、あいつはキツネだ。いつ裏切るかわからない」と偏見の目で見られてしまうのです。
自分がどれだけ努力をしても、自分の姿かたちだけで人となりを判断されてしまう、まさに差別そのものを幼少期に経験してしまったニック。
その後の彼の身の振り方は、道理にかなっていると言えるでしょう。
ニックをいじめた草食動物たちは非常に極悪な描かれ方をしていましたが、草食動物たちにも彼らの言い分はあるかもしれません。
自分の身を守るためには、必要悪だったのかもしれません。
しかし、相手と議論を交わさず、その言い分を貫くことこそが差別やいじめの始まりであるということは言うまでもないでしょう。
どれだけ言葉を尽くしても、どれだけ人に尽くしても、どれだけ悪いことをしなくても、ニックは迫害されてしまう運命であるというトラウマを抱えてしまったのです。
過去③ 詐欺師として生計を立てる
🦊ニック
「あのなあ、ズートピアに来るヤツは何にでもなれると思ってる。でも無理なんだよ。自分は変えられない。ずるいキツネ、マヌケなウサギ」#ズートピア🐰🦊#金曜ロードショー pic.twitter.com/MqlD73nbxd— アンク@金曜ロードショー公式 (@kinro_ntv) December 8, 2023
そんな幼少期を過ごしたニックは、「キツネはキツネらしく」と、詐欺で生計を立てるようになります。
最初から大衆のイメージ通りに動くことで、自分自身に期待をしないようになりました。
現代を生きるひとにも多分にある、「予防線」というものです。
生まれつき目つきが悪いと迫害されてきた子が非行の道に走るかのように、ニックもこれ以上自分が傷つかないように、自分は生まれながらに悪者であると自分自身に嘘をつきながら生きていきます。
本来のニックは、正義感が強く、レンジャースカウトに憧れを持つ無垢な少年だったはずなのに、法をかいくぐってお金を稼ぐ詐欺師へと変貌を遂げてしまいます。
もしかすると、詐欺師に転身をする前にも、レンジャースカウト時代と同様の経験を繰り返していたのかもしれません。
ただ、そんなニックに差した一筋の光、それがジュディだったのです。
ジュディは彼を「キツネだから」と偏見を持ちませんでした。
それだけではなく、彼を見込んで警察官に誘ったのです。
そんなニックからしたら、ジュディの肉食動物に対する偏見の言葉には、トラウマが蘇ったのかもしれません。
当初は肉食動物だけ首輪がされていた
コンセプトアートのニック
首輪ありのズートピアも見たかった もっとヘビーな内容で pic.twitter.com/aE4onFkn3J— SIZIMI@貝 (@captain_sizimi) June 7, 2016
公開時には削除されていますが、製作段階では肉食動物には首輪がされるという設定があったそうです。
肉食動物は興奮をすると草食動物に危害を加えかねないという理由から、首輪をつけられ管理されているという設定でした。
悪いことをたくらんだり、興奮状態になると、その首輪から電流が出るというシステムを想定されていました。
本作の主題でもある「差別」を、ものすごくダイレクトに表現しているものではないでしょうか。
さらに、この設定はニックが主人公とされていた時の設定でした。
ニックには息子がいて、スーツの仕立て屋を一緒にしようと思っていたものの、草食動物たちによってその夢が絶たれるというストーリーでした。
ですが、このストーリーで構成されるズートピアという世界観を製作陣が愛せず、今のズートピアが生まれたのです。
差別問題から削除シーンとして有名
ズートピア周回プレイの人目のハイライトに注目して見るのも楽しいよ。本編から削除されたシーンで説明するけど(だからネタバレなし)首輪が外れた直後→実感→安堵の笑みの流れなんだけど、ハイライトが希望/絶望を表してるよ… pic.twitter.com/EMxldUOIR0
— ガラパゴスドンナ・ジャック (@JACK_RED_NIGHT) May 16, 2016
もうひとつ、削除されたシーンとして有名な一幕があります。
ジュディとニックが、とある場面に遭遇してしまうというシーンです。
そこでは、親子のクマが「お祝い」をしています。
親のクマは、子どものクマに「Tame Collar」という首輪をプレゼントします。
子どものクマは、それがすべての大人についている首輪だと知っているため、自分も大人の仲間入りを遂げたと理解し、素直に喜びます。
ですが、大人はその首輪をつけることで、本来の自分の姿を解放できず、草食動物によって「飼いならされている」状態になるものだと知っています。
そう、興奮状態に陥ると電気ショックを浴びるのです。
そんな危険なものを可愛い我が子につけなくてはいけない親は、非常に切ないですね。
そしてこの「Tame Collar」、直訳すると「飼いならし首輪」なのです。
【ズートピア】ニック(キツネ)の過去についてまとめ
ズートピア、初期設定では 肉食動物には感情が高ぶると電気ショックが流れる首輪を付けないと ズートピアには住めない設定があったらしくて ダークすぎる
ニックも電気ショックの首輪つけて生活してたらしい 怖すぎディズニーさん pic.twitter.com/XtNXT0IytN— ※ しおしお号 (@shiori4614) May 23, 2016
今回は、ニックの過去についてまとめてみました。
公開されたズートピアでも壮絶な過去を経験しているニックですが、製作当初はもっと悲惨な半生となるはずだったなんて、驚きです。
ニックに共感できる人が多いからか、単純にニックがいいキツネだからかはわかりませんが、ニックを応援する人が多いのも納得ですね。
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