チ。名言一覧まとめ!ラファウやヨレンタの響く言葉集

公開日: 2024年10月23日 | 最終更新日: 2024年10月23日

 

チ。ー地球の運動についてー】では、「地動説」を研究することは死に繋がる「異端とされています。

人生を、命を懸けて地動説に挑むキャラクターたちは時に、読んでるだけで心が震えるような言葉を口にします。

なので今回は、そんな「チ。」の名言を独断と偏見で選び、まとめてみました!

この記事を見て分かること
  • 信念からくる名言
  • 感動を伝播させる名言
  • 真理をついた名言

 

※この記事には「チ。」の重大なネタバレも含まれます。ご注意ください。

 

目次

 

 

心に響く名言集はこれ

 

  • だが、私はそんなの認めない。神が作ったこの世界は、きっと何より美しい。ーフベルト

 

  • そして今から、地球を動かす。ラファウ

 

  • 二つ目は、一つ目全部無視して、この世界に期待することだ。ーグラス

 

  • 彼の誤りは、太陽に挑んだ傲慢さではない。蝋が溶けるという父の警告を軽んじた無知にある。ーピャスト伯

 

  • この世は、最低と言うには魅力的すぎる。ーヨレンタ

 

  • きっと、それが何かを知るということだ。ーバデーニ

 

  • 文字は、まるで奇跡ですよ。ーヨレンタ

 

  • 私が少食だったことを思いだした。ーバデーニ

 

  • なんというか夢っていうのがあると、とりあえず一週間くらいは悲劇に耐えられる気がします。ーオグジー

 

  • そうです。それでも、間違いを永遠の正解と信じ込むよりマシでは?ーオグジー

 

  • 「汝の敵を愛せ」この言葉に、僕は帰依してる。ー新人異端審問官

 

  • でも、髪を結んでいたほうはパンをくれた。ー貧民

 

  • 半端な知性からは勘違いが生まれ、勘違いからは悲劇が生まれる!ーシュミット

 

  • この発想には弱者を救済する仕組みがない。ードゥラカの叔父

 

  • 遠く離れた何処かにも同じ神を信じる人がいる。それだけでどれだけ心強いか。ーレヴァンドロフスキ

 

  • 悪を捨象せず飲み込んで直面することでより大きな善が生まれることもある。ーヨレンタ

 

  • 不可能なんて存在しない。特に人の心に関しては!ードゥラカ

 

  • 神様、ーノヴァク

 

  • そりゃ最低の嘘だぜ。俺にじゃなく自分に吐いてる嘘だからだ。ーパン屋

 

  • ーアルベルト・ブルゼフスキ

 

基本的に漫画とは、作者が強調したいことが大ゴマで表現されます。

なので、大ゴマに書かれた吹き出しは、基本的に名言ばかりと言っても過言ではありません

特にフベルトヨレンタ、この2人は個人的に、二大名言製造機だと思っています。もうね、口に出すことすべてが刺さります。

とはいえ、刺さった言葉を全部書き出すと50項目とかを平気で越えてしまったので……
そこからしぼりにしぼり、あくまで独断と偏見で、「チ。」の名言を20個!選別してみました。

それではいってみましょう↓↓

 

だが、私はそんなの認めない。神が作ったこの世界は、きっと何より美しい。

登場回:1巻2話
発言者:フベルト

 

1話冒頭で「世界、チョレ~~~~」とかホザいていたクソガキのラファウ
そんなラファウは養父の紹介で、「異端」ことフベルと出会います。

「チ。」の舞台であるP王国では、C教と「を信仰しており、その宗教観はキャラクターたちの根幹であり指針です。
ラファウも世の中を舐めきったクソガキではありますが、「神」の存在は一度も否定していません。

 

しかし「異端」とは、「神」と「神の教え」に真っ向から対立する存在
なのでラファウは、「異端」であるフベルトが理解できませんでした。

そこでラファウはフベルトに、「何故、フベルトさんは教会から追われる「異端」として生きるのか? あなたは神を否定したいのか?」と訊ね、
ベルトはそれに「神を信じているから『異端』として生きるのだ」と返します。

「人は皆、現世このよは醜く貪欲で汚れていて、天国あのよは清く美しいと言う。

だが、私はそんなの認めない。神が作ったこの世界は、きっと何より美しい。

 

だから、フベルトは地動説を研究し――最期は「異端」として、生きたまま焼かれます。

しかしその意志は、ラファウに引き継がれたのでした。

 

 

そして今から、地球を動かす。

登場回:1巻2話
発言者:ラファウ

 

「異端」のフベルトと出会ったことで、ラファウの価値観にもまた、変化が訪れました

もともと「合理的なもの」に惹かれがちだったラファウは、「地動説の美しさ」に魅了されたのです。

ラファウは地動説が「異端」であり、処刑対象になると心底理解しながらも、フベルトから地動説の研究を受け継ぎました。

 

「この世はバカばっかりだ」「僕はバカじゃないから合理的に生きる」と決めていたクソガキのラファウが、

そして今から、地球を動かす。

と「木製の球のネックレス」を首に結ぶシーンは、鳥肌もの。

 

のちに、フベルトの言葉をリフレインする形でラファウが口にした、「でも、不正解は無意味を意味しません」にも表れていますが……

フベルトの死は、そして生は、絶対に無駄ではなったという証明がされた瞬間でした。

 

二つ目は、一つ目全部無視して、この世界に期待することだ。

登場回:2巻9話
発言者:グラス

 

フベルトからラファウに地動説のバトンが渡された1巻。
2巻では、1巻から10年の月日が経ち主人公もラファウからオグジーに交代します

オグジーは、フベルトも触れていた「現世は醜く穢れていて、天国は清く美しい」の聖書の解釈に囚われ、「この世に希望はないので、早く天国に行きたい」と希死念慮にまみれた青年でした。

夜空も満足に見られないくらいに。

アニ木
アニ木
名前からして、オグジーのルーツはP王国では人種的マイノリティであると推測されるし、代闘士という職業もP国民には差別されているようだしね

 

そんなオグジーにこの世の希望を説いていたのが、代闘士の先輩のグラスさんでした。

オグジーとグラスさんは仕事の中で「異端」と出会い、地動説に触れます。

そしてグラスさんが死の間際に、オグジーにかけた言葉が、

「ここからは君が選んでほしい。……この先の選択肢は二つだ。
一つは、(フベルトとラファウが遺した)石箱をC教に通報すること

二つ目は、一つ目全部無視して、この世界に期待することだ。」

でした。

 

希望は天国にしかない、と言い切っていたオグジーに、死に瀕して笑いながら逝ったのがすごかったです、グラスさん。

同話で出てくる「託してる」もいいけど、めっちゃいいんですけど、こっちの台詞も同じくらい、素晴らしいんですよね!

 

 

彼の誤りは、太陽に挑んだ傲慢さではない。蝋が溶けるという父の警告を軽んじた無知にある。

 

登場回:3巻17話
発言者:ピャスト伯

 

ピャスト伯は、「完璧な天動説」を求めて生涯を天文学に捧げた貴族の老人です。

高齢であることと、喀血を伴う咳からおそらく病気も患っていたと推察できるのですが、とにかく己の死期を悟っていたピャスト伯は、天文学研究者らの前でこんな演説をしました。

「大衆が(作中で主流の)プトレマイオスの天動説を受け入れているが、我々だけは真理の探究を諦めてはならん。アレは真理とは思えない
異教徒の神話にイカロスという者がいる。蝋の翼で太陽を目指し墜落した者だ。

彼の誤りは、太陽に挑んだ傲慢さではない。蝋が溶けるという父の警告を軽んじた無知にある。

我々は蝋でダメなら鋼の翼を作り、太陽しんりへ挑み続ける。
真の宇宙を完成させる為、イカロスにならねば。」

 

個人的に、この一連の演説の中で彼の誤りは~部分に特に惹かれたのは、ピャスト伯にとって「異教徒の神話」であるはずのイカロスの教訓を忌避感なく引用し、本質をついた指摘をしているからなんですよね。

「無知だからこそ太陽に届かなかった」、だからこそ「”知”を恐れるな」というこのメッセージは、「チ。」全編を通したテーマでもあります。

そしてピャスト伯のこの姿勢は、彼の目指した「完璧な天動説」でこそなかったものの、「真理」に届きえたのでした。

そこがまた、痺れましたね。

実際、このピャスト伯がいなければ、オグジーと相棒(?)のバデーニが地動説を完成させるのに、もっととんでもなく時間を費やすことになっていたでしょうね。

 

この世は、最低と言うには魅力的すぎる。

登場回:3巻20話
発言者:ヨレンタ

 

前項で紹介したピャスト伯と、オグジーらをつないだのが、ピャスト伯のもとで働くヨレンタさんです。

賢く、行動力にも優れた彼女はとにかく名言製造機なので、選抜するのに本当に苦労しました。
その一例がこちら↓

この世は、最低と言うには魅力的すぎる。

 

これは地動説に触れてなお、「この世には苦しみが多い、やはり天国に期待するしかないのでは」と揺れるオグジーの弱音に対しての、ヨレンタさんの言葉なのですが……

ただ女性であるというだけで満足勉強会に参加させてもらえず、男の上司に論文を奪われたヨレンタさんの境遇を思うと、信じられないくらい強い台詞であることがわかります。

 

「私も、ここ(現世)に救いがあると思ったことはあまりない。

でも、この世は最低と言うには、魅力的すぎる。

悲劇の類いの物達ですら何故かすべて美しさを備えてる。コレには何か理由があっていい。

それが、地球の運動なのかもしれない。
大地と宇宙よぞらが一つなら、どんなに汚してもこの世から輝きは簡単に消えない。」

 

……このセリフを発した当時、ヨレンタさんはまだ14歳。

それを踏まえると本当に、とんでもない言葉ですね。

 

きっと、それが何かを知るということだ。

登場回:3巻20話
発言者:バデーニ

 

続いてご紹介するのは、オグジーの相棒?にして、地動説を完成させた男・バデーニさんの言葉。

このバデーニという男は聡明なのですが、とにかく選民思考が鼻につく傲慢野郎且つ、自分のことしか考えていない尊大野郎です。

いや、……でした

 

バデーニもまた、地動説を通しオグジー、ヨレンタ、ピャスト伯らと出会うことで、どんどん変わっていったのですね。

長きにわたって夜空に怯えていたオグジーは、ついにその恐怖を乗り越えて、夜空を観測し、「不思議だ、ずっと前と同じ空を見てるのに、少し前からまるで違く見える。」と言いました。

それを、「だろうな」と首肯し、

きっと、それが何かを知るということだ。

 

と言ったバデーニ。

そのときのバデーニは、自己中心的な発言の目立ったこれまでと違い、人々を導く神職者にふさわしい風格を備えていました。

 

文字は、まるで奇跡ですよ。

続いてもヨレンタさんの言葉です。

登場回:3巻21話
発言者:ヨレンタ

 

バデーニ、ヨレンタ、ピャスト伯らが当たり前にできる、「文字を読むこと」ができないオグジー

オグジーは、3人の研究姿勢を見続けて抱いた「文字が読めるってどんな感じなんですか?」という疑問を、ヨレンタさんにぶつけます。。。

年上の大男の素朴な疑問。

 

それを笑わず、あなたが知る必要はないことだとと突っぱねることもなく、真剣に考えたヨレンタさんは、「C教徒としてこんな表現はよくないけど」と前置きをしつつ、

文字は、まるで奇跡・・ですよ。

と答えました。

 

文字は、時間と場所を超越できる

文字を読むときだけは、200年前や1000年前に生きたかつての偉人たちの言葉を聞くことができ、その一瞬だけ、この時代から抜け出せるし。

文字になった思考は、ずっとずっと未来の誰かを感動させることもできる。

だから、「奇跡」なのだと、ヨレンタさんは言ったのですね。

そして、この言葉を受けて、オグジーは自らも「文字を、本を書いてみたい」と思うようになり、その「本」の存在が3章につながっていくのでした。

 

私が少食だったことを思いだした。

登場回:4巻23話
発言者:バデーニ

 

上項で紹介したとおり、ヨレンタさんの言葉に触発されたオグジーは、文字を習い、自ら「本」を書き始めました

それをオグジーがバデーニに話したとき、バデーニの反応ときたら「は?」「は??」「は????」と冷淡なものでした(本当に3回言った)。

バデーニは「文字は限られた人間だけが使うべき」「そうしないと、ゴミみたいな情報が世の中にあふれかえってしまうから」と言い捨てましたが……

アニ木
アニ木
現在のインターネットの魑魅魍魎ぶりを見てると、バデーニの慧眼がすごいとわかるね!

 

オグジーが書いた本を(勝手に)読んで、……なにか感じ入ることがあったらしく、一転して、オグジーの執筆活動に異を唱えなくなりました

 

私が少食だったことを思いだした。

これもまた、かつてバデーニが「無駄」だと切り捨てた貧民への施し(パンの配布)を続けるオグジーの活動を、認めるかのような言葉だとわかります。

このめちゃくちゃへたくそな言い訳セリフとともに、いつもより多めにパンを融通したのですからね。

バデーニは本当に選民思考の傲慢野郎だったのですが、オグジーの書いた「本」には、そんなバデーニを変えるだけの力があったのです。

 

なんというか夢っていうのがあると、とりあえず一週間くらいは悲劇に耐えられる気がします。

登場回:4巻25話
発言者:オグジー

 

なんというか夢っていうのがあると、とりあえず一週間くらいは悲劇に耐えられる気がします。

地動説の完成にあたり、ささやかな祝杯をあげることにしたオグジー、バデーニ、ヨレンタさん。その場で出てきたオグジーのセリフがこれです。

かつて「夢を持つのはいい」と言っていたグラスさんの言葉を、理解できていなかったオグジー

 

しかしオグジーは、地動説を通して出会った人たちの影響で、あれほど恐れていた「夜空」を見ることを、もう恐れなくなりました。

それどころか、文字を学び、「大学に行きたい」という夢を抱くまでになったのです。

あれほど悲観的だったオグジーが、グラスさんの言葉を理解できるようになった……

これには草葉の陰のグラスさんもにっこりいや感涙してることでしょう。

ただし……この回で、ヨレンタさんの父親が登場したことにより、事態は一変します。

 

そうです。それでも、間違いを永遠の正解と信じ込むよりマシでは?

登場回:4巻27話
発言者:オグジー

 

ヨレンタさんの父親こと、異端審問官ノヴァクに目をつけられてしまったオグジーとバデーニ。

損切り上手のバデーニはノヴァクの危険性を把握すると、すぐさま地動説の研究資料を燃やします

バデーニにとっては「自らが地動説を発表すること」が重要であり、かつてのフベルトやラファウのように、ほかの誰かに「託す」ことに対しては、何の興味もなかったからです。

 

それに対し、異を唱えたのがオグジーでした。

「あ、あまり他人を排除しすぎると、間違いに気づきにくくなるのでは…? それは研究・・にとってよくないんじゃ……」


「ピャスト伯は自ら”自分が間違っている可能性”を信じ、それを受け入れた。」


「そのピャスト伯の態度こそが、『自らが間違っている可能性』を肯定する姿勢が、学術とか研究には大切なんじゃないかってことです。」

 

このオグジーの台詞から、彼がどれだけピャスト伯の生きざまに敬意を持ったかがわかりますね。

そしてオグジーは、バデーニの問いかけに、怯むことなくこう断言しました。

バデーニ「その姿勢を研究に採用してしまうと、我々は目指すべき絶対真理を放棄することになる。そして学者は永久に未完成の海を漂い続ける。」

「その悲劇を、我々に受け入れろと?」

 

オグジー「そうです。それでも、間違いを永遠の正解と信じ込むよりマシでは?

 

文字が読めなかったオグジーは、地動説の精査についてほとんど協力できていません。

ピャスト伯の資料を得たバデーニが、ほとんど一人で地動説を完成させました。

 

しかし、最初からピャスト伯の資料にしか興味のなかったバデーニと違い、オグジーはピャスト伯の「人となり」を見ていたのですね。

人生の大半を費やした研究の結果が、間違いだった――それでも、「真理」のために研究資料をバデーニらに託したピャスト伯の、その姿を。

だからオグジーにはこの言葉が言えた。

研究者ではないオグジーが、ピャスト伯の意志を受け継いだからです。

 

……そもそも、ノヴァクの手が迫っていて時間がないという状況で、「下等民」だったオグジーと対話するバデーニ、という構図がもう、2章序盤では考えられない光景なんですよね。

わざわざ言葉にするのも野暮ですが……バデーニはいつしか、(おそらくは、「本」を読んでから)オグジーのことを認めるようになったのでしょう。

この一連の会話は、オグジーとバデーニ、2人が対等になった証でもあるのです。

 

「汝の敵を愛せ」この言葉に、僕は帰依してる。

登場回:5巻33話
発言者:新人異端審問官

ノヴァクによって追われることになったオグジーとバデーニでしたが、ヨレンタさんもまた、無事では済みませんでした

ヨレンタさん自身は地動説の研究をしていたわけではない……のですが、ノヴァクの失脚を狙った教会側の内紛によって、アントニ司教というクソ野郎の主導の下、ヨレンタさんは異端審問官らに拷問されそうになっていました。

しかしここで、一人の新人異端審問官が決死の覚悟でヨレンタさんを逃がします

当然これは職務違反であり、新人異端審問官はアントニ(クソ)司教からリンチを受けます。

アントニ司教「君が逃したのは全人類のかもしれんのだぞ。」

 異端審問官「……だとしても、」
      「
汝のを愛せ』
      「この言葉に、僕は帰依してる。

……私は特定の宗教を信仰していないので、この言葉を究極には理解できていないのだと思います。

なのに、このシーンには鳥肌が立ちました。

そうか。バカがよくする大きく間違った解釈だ。神学を学びなおせ」と即座にアントニ司教は切り捨てますが、この状況下でこの言葉を口にできた異端審問官のほうに、個人的には、痺れてしまいました。

「チ。」では「異端」こと地動説を研究するキャラクターが中心に描かれているので、読んでいるうちに読者はどうしてもC教へ嫌悪感を抱いてしまうと思うのですが……
そこをフォローするというか、C教が悪なわけではないよ、というメッセージも感じますね。

でも、髪を結んでいたほうはパンをくれた。

登場回:5巻35話
発言者:貧民

オグジーは定期的に、貧民たちへパンの配給をしていました。

しかしオグジーは……バデーニとともに、32話で死亡し、貧民への配給は途絶えます。

そこで貧民たちは、集まってこんな話をします。

「おい。髪を結んだアイツ(オグジー)、とうとう来なくなった。だからパン貰えない」
 「…いや、俺は前約束・・をした。最初には話ししたあの目のないヤツ(バデーニ)と約束をした。」
 「そうだ、アイツ言ってた。なんの連絡もなくパンを渡さなくなって一か月たったらある場所へ行けって。」
 「そこ行ったら、またパン貰えるかも。」
 「…いや待て。これは…罠かもしれない。だってアイツはパンと引き換えに、俺たちのあんなこと・・・・・をした。」
 「…確かにアイツの考えはわからない。」
 「でも、」

 「でも、髪を結んでいたほうはパンをくれた。」

 「…ああ。あいつはいいヤツ。だから行こう」

 

オグジーが貧民たちにパンを施していたことで、
この貧民たちが一歩を踏み出したことで、

バデーニが死ぬ前に、同僚のクラボフスキさんに手紙を書いたことで、
クラボフスキさんがその手紙にバデーニの「真心」を見出したことで、、、

バデーニが証拠隠滅のために焼いたオグジーの「本」は、復元されたのでした。

この「本」は、ここから25年後にも影響を及ぼすこととなります。

 

半端な知性からは勘違いが生まれ、勘違いからは悲劇が生まれる!

登場回:6巻38話
発言者:シュミット

 

そして舞台は第3章、2章から25年が経過した世界に移ります。

メインとして登場するのは「異端解放戦線」。その名の通り、「異端」として捕らえられた人々の開放をしている武力組織ですね。

シュミットはそんな異端解放戦線で隊長をしています。が。

 

彼個人の思想は「神は自然を作り、自然に宿るものなので、神を人工化しているC教をはじめとした既存の宗教はすべて破壊したい」という、とてもピーキーなものであり、その言動は解放した「異端」からも引かれるほど

「異端」らの間では英雄視されていたシュミットですが、どうやら噂に尾ひれがつきまくって神格化されていたようですね。

言ってしまえばシュミットは、彼が自称する自然主義ナチュラリストというよりは「まずは破壊を!」と叫ぶテロリスト寄りの人間なので、その神格化は現代の価値観だと危険極まりないんですが……いや、それは作中でもか。作中でもです。

 

しかし、38話で異端(※シュミットと違いC教正統派を信じてはいる)」の男と問答をしたシュミットは、「C教正統派も神を人工化しているので破壊されるべき」と悪びれることなく思想をぶつけた中で、こんなことを言います。

「半端な知性からは勘違いが生まれ、勘違いからは悲劇が生まれる!」

 

シュミット、間違いなく過激な男なのですが、↑こういう真理も口にできるほど聡明な男でもあり……「だから破壊を!」と続けるし、そこが厄介なんですが。

結局この「異端」とシュミットの会話は平行線だったのですが、それを責めることなく「よろしい! 君の想いを尊重する!」と快く「異端」と別れました。

現代の価値観では激ヤバ男なシュミットですが、「私はあなたの意見には反対だが、あなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」という哲学者ヴォルテールの言葉をなんとなく彷彿させますね。なんとなく。

 

この発想には弱者を救済する仕組みがない。

登場回:6巻40話
発言者:ドゥラカの叔父

 

あまりにもいいことを言うのでシュミットをフライングで登場させてしまいましたが、3章の実質的主人公は、ドゥラカという少女です。

このドゥラカ、考え方が資本主義の申し子という感じで、「死への不安をなくすためにとにかく金を稼ぎたい」が信条の、これまでの「チ。」ではいなかったキャラクター造形をしています。

ただ、「チ。」の登場人物にふさわしく、やはりドゥラカもとんでもなく聡明な人物なので、ご安心を(?)

 

さて、ドゥラカは幼いころに父を亡くし、肉親は叔父しかいません。

この叔父というのが、ひどい飲んだくれダメ親父なんですが、村でドゥラカと同レベルの会話ができる唯一の人物でもあるんですね。

 

そんな叔父姪による会話の一部がこれ↓

ドゥラカ「個人の自由競争で集団全体の利益を増やせるんじゃないかと思ったんだけど、どう?」

叔父「私は反対だ。それでは共同体が壊れてしまうからだ。競争を刺激するには我々という共同体人間は少なすぎる。保たないよ。」

「確かに数が増えるほど競争は激化するが、その分、格差も酷くなる。そしてそれは争いを生む。」

「この発想には弱者を救済する仕組みがない。」

「倫理を失った自由は混沌カオスだ。集団を動かす際は常にそれを気にかけねばならん」

 

姪から急に振られた未知の話を驚かず受け入れるどころか即座に理論を構築して説き伏せられるあたり本当に頭がいいんですよね、この叔父。

こんな現代社会でも解決していない問題をまるで為政者のような口調で、クソ飲んだくれダメ親父が言うんだから、読者としては「チ。」の持つ「厚み」に脱帽するほかありません。

この叔父、姪を売るクソ親父のくせして何気にフベルトさんやヨレンタさんに並ぶ名言メーカーなのが腹立つんですよね~!

 

遠く離れた何処かにも同じ神を信じる人がいる。それだけでどれだけ心強いか。

登場回:7巻47話
発言者:レヴァンドロフスキ

 

レヴァンドロフスキもまた、シュミットと同じく「異端解放戦線」の人間です。

レヴァンドロフスキの上司であるシュミットは、ひょんなことから異端解放戦線と行動を共にすることになったドゥラカと、その思想からしばしば対立します。

シュミットは「神は存在するが、人工化されている宗教は破壊・解体されるべき」という思想で、
ドゥラカは「どの宗教の神も信じていない。己を安心させることができるのは金銭だけ」という信条。

 

そりゃ合うはずもありません。

特にドゥラカの「神を信じていない」という姿勢は「チ。」の中で極めてまれな存在であり、あるいはこれまで登場したどんな「異端」よりも「異端」然としていますね。

 

しかしシュミットをはじめ異端解放戦線は(ドゥラカに利用価値があるからとはいえ)彼女を放逐することなく、対話を試みます。

レヴァンドロフスキもドゥラカに対し、冷静にこう言いました。↓

「隊長には言わねぇが、宗教は大切だ。宗教がなきゃきっと人はここまで強くなかった。

遠く離れた何処かにも同じ神を信じる人がいる。それだけでどれだけ心強いか。」

 

これも、新人異端審問官の言った「この言葉に僕は帰依してる」に通じる、思想と生活と信念に「神」がいる人間しか言えない言葉なのではないでしょうか。

特定の宗教を支持していない私ですら、その「安心感」がなぜかすんなり納得できるほどの、平易でありながら奥深いセリフだと思います。

こういうセリフからも、「チ。」が決してC教をはじめとする宗教を悪し様に描いているわけではない、ということが伝わってきますね。

また、「チ。」では2章まで「話が通じないなら殺し合うしかない」と惨事に発展することが多かったように思うのですが、この3章では違う主義主張を持つ者同士でも「議論」ができるようになっていて、ここに、作品内で流れた「時間」を感じることもできました。

 

悪を捨象せず飲み込んで直面することでより大きな善が生まれることもある。

登場回:7巻48話
発言者:ヨレンタ

 

そして3章では、39歳となったヨレンタさんが登場します。「異端解放戦線」の組織長ボスとして、です。

25年の月日は、一人の少女をしたたかな女性に変えました。しかしヨレンタさんの根底には、オグジー、バデーニの遺した思いがずっと根付いていたのです。

ドゥラカが異端解放戦線と行動を共にするようになったのは、ドゥラカだけがオグジーの遺した「本」の内容を記憶していたから。

 

かつて「文字は奇跡」と評したヨレンタさんは、再び文字によって、25年の時を超えてオグジーらと対話したのです。

そのお礼、だったのでしょうか。

ヨレンタさんは会話の中で、ドゥラカにたくさんの言葉を残しました。その中の一つがこれです↓

「神は人を通してこの世を変えようとしてる。長い時間をかけて少しずつ。この”今”はその大いなる流れの中にある。とどのつまり、人の生まれる意味は、その企てに、その試行錯誤に、”善”への鈍く果てしないにじり寄りに、参加することだと思う」

「悪を捨象せず飲み込んで直面することでより大きな善が生まれることもある。」

「善と悪、二つの道があるんじゃなく、すべては一つの線の上で繋がっている。」

「でも、歴史を切り離すとそれが見えなくなって、人は死んだら終わりだと、有限性の不安に怯えるようになる。歴史を確認するのは、神が導こうとする方向を確認するのに等しい。だから過去を無視すれば道に迷う。」

 

現在「少女」であるドゥラカにはピンと来ていなかったようですが、これは、25年の歳月の中で「大人」となった、ヨレンタが悟った一つの真理なのでしょう。

『チ。第Q集(公式トリビュート本)』に寄稿されている朝井リョウのショートショート「いずれωが語りだす」に、「悪を捨象せず~」↑について、朝井氏なりに言い換えた箇所があります。

 

”「たとえば今の時代で判断すれば徹底的に間違った文章を残したとして、今生ではそれが恥として記録されたとしても、そこから手繰り寄せられる未来の善があるかもしれない

魚豊の「チ。」と、
それを踏まえたうえでの、朝井リョウの「いずれωが語りだす」。

この2つを合わせて読むと、ヨレンタさんの考え方が、いかに世俗を超越したものであるかが理解できる気がします。

事実、「地動説」が確立されたことによって人類は月に手を伸ばすことができた。
それを知っている我々現代人だからこそ、刺さる言葉ですね。

 

不可能なんて存在しない。特に人の心に関しては!

登場回:7巻51話
発言者:ドゥラカ

 

オグジーの「本」を出版することに、人生を、そして命を懸けたヨレンタさん。

ヨレンタは教会の手から逃れるため、本の内容を記した活字を部下とドゥラカに託したあと、証拠隠滅のため火薬を使って自爆します。

そうして異端解放戦線の面々とドゥラカは印刷所にたどり着くのですが……スパイによって、その印刷所の場所も教会に知られてしまうことに。

教会に邪魔されることなく「本」を出版するためには、「みんなでバラバラに逃げ、運よく生き残った者がなんとか出版までこぎつける」しかない、という絶望的な事態に陥りました。

 

それに異を唱えたのがドゥラカでした。「皆で協力して私(ドゥラカ)を逃がせば、運に頼るよりも格段に、出版できる可能性が上がる」と説き伏せたのです。

ただの命惜しさで言ったのではありません。実際、ドゥラカには「勝算」があったのです。

とはいえ、その「勝算」とは「教会側のとある人間」を頼るというものであり、異端解放戦線のほとんどは、「勝算」が低いと反発。

レヴァンドロフスキ「何バカなこと言ってるんだ。そんなことできる訳ないだろ! 今から誰と戦うと思ってるんだ! 教会だぞ!」

ドゥラカ「わかってる。でも…私は教会じゃなく彼個人・・・と話しに行く。」

レヴァンドロフスキ「(説き伏せるなんて)不可能だ!」

ドゥラカ「不可能なんて存在しない。特に人の心に関しては!」

 

神を信じず、お金によってのみ「安心」を得られると信じていたドゥラカ。

そんなドゥラカはしかし、ヨレンタとの対話によって変化が生じ「ヨレンタさんの感動」のために何かできることはないかと模索し、答えを見つけるまでに至ったんですね。

アニ木
アニ木
この「感動」という言葉は、1章でも2章でも、折に触れて出てくるね

 

自分が変わったという自覚は、おそらく誰よりもドゥラカ自身が抱いていたことでしょう。

そんなドゥラカの言葉だからこそ、このセリフには説得力がありますね。

 

神様、

登場回:8巻57話
発言者:ノヴァク

 

1章から10年が経った2章、そこからさらに25年が経った3章。

それらすべての章に登場した唯一の人物、それが異端審問官・ノヴァクです。

3章のノヴァクは、最愛の娘ヨレンタを失った(とアントニ司教に思い込まされていた)ことによる失意から、異端審問官を退き、酒浸りの日々を送っていました。

 

しかし地動説憎しのため、もう一度、教会のために立ち上がります。

再起したノヴァクは「異端解放戦線」のボスを自爆に追い込み、「異端解放戦線」を壊滅させ、ドゥラカとアントニ司教による「本」の印刷の密約を台無しにし、アントニ司教を刺殺、ドゥラカにも致命傷を与える……と、老いてもなお有能さを発揮しましたが、それもドゥラカの反撃によって、終わります。

ドゥラカに胸を刺し返されたノヴァクは死の間際、かつて自分が死に追いやった「異端」、ラファウの幻覚を見ました。

 

ノヴァクは幻覚のラファウに問います。「私の娘は、天国に行けたのか?

ラファウ(幻覚)はそれに、

さァ?

死後のことは誰も知らない

でも、そうなってほしいなら、

貴方がまだ生きている内に、すべきだと思うことをしてください。」

やり残したことを。

と答え、消えました。

 

アニ木
アニ木
マジでこういうこと言いそう、ラファウ。ノヴァクは本当に「異端」たちのことを忘れてなかったんだね……

 

だからノヴァクは、懐から愛娘の忘れ形見である手袋と――「異端解放戦線」のボスの焼け残った右腕を取り出し。

腕に手袋をかぶせて――そして、目の前で自爆したボスこそがヨレンタだと、心から認めることができたのでした。

そのうえで、腕をぎゅっと抱きしめ、「神様、」と手を合わせたのです。

 

「神様、

 神様、娘の過ちはすべて私の勘違いが原因なのです。

すべて私の過ちなのです。

地動説があなたに反するものでないなら、どうか、どうか、

どうか、どうか子供むすめは天国へ。」

 

そう祈りながら、祈り続けながらノヴァクは倒れ、その遺体は教会とともに燃え尽きました。

ノヴァクは、ただの非情な拷問官ではなく、
道端で泣いている子供を放っておけない、「泣いている子供に寄り添う以上に必要なことなんてあるか?」と考えることのできる、親バカな面も持った、至って「普通の生活者」として描かれたキャラ――なのだと、声優の津田健次郎氏、そして作者の魚豊氏は語っています。

 

信仰を持ち、家族を愛し、それらを脅かす「異端」を自らの手を汚してでも排除してきた、それがノヴァクというキャラクターだったんですね。

 

そりゃ最低の嘘だぜ。俺にじゃなく自分に吐いてる嘘だからだ。

登場回:8巻59話
発言者:パン屋

 

ノヴァク、そしてドゥラカの死後、物語は3章からEXに移ります。

1章時点で「P国」とされた土地に、「ポーランド王国」と明確な国名が出て、視点人物はパン屋で働く男、アルベルトへと変わりました。

もちろん読者は、アルベルトなんて新キャラを見て、最初は戸惑います。誰?ってなもんです。

 

しかしこのアルベルトが働くパン屋の店主とのやり取りで、アルベルトの人となりもある程度わかるようになっていきます。

が! それはそれとして、このパン屋の店主がめっちゃいいことを言うので、ご紹介します!

アニ木
アニ木
中世ヨーロッパのパン屋は教会によって頻繁に抜き打ちテストをされたうえ、決まった分量などに違反があったら刑罰に課せられたこともあったという前提で読んでね!

 

(うちのパン屋は)パン監視官にバレねぇように、値段より良いものを出そうとしている。
なんでそんな危険を冒してるかわかるか?
パンを焼くのが好きだからだ。勿論、食ってもらうのも。

だがな、お前(アルベルト)はそうじゃないだろ。
ここでの生活で十分満足?

そりゃ最低の嘘だぜ。俺にじゃなく自分に吐いてる嘘だからだ。

 

パン屋の店主は、俺は「パンを焼くこと」が自分のアレテー(自分の得意なこと、自分にしかできないこと)だとわかっているけれど、アルベルトのアレテーは「天文を学ぶこと」だろう? 

だから、アルベルトは大学へ行け。
と……こう言ってるんですよね、パン屋。

新人異端審問官や、貧民、そしてこのパン屋など、作中で名前が出てこないキャラクターも、こんな示唆に富んだことを言う――その豊かさが「チ。」という作品の厚みなのではないかと、個人的には思います。

 

登場回:8巻 最終話
発言者:アルベルト・ブルゼフスキ(のちのコペルニクスの師匠)

 

上記のやり取りのあと、読者は、アルベルトが過去のある経験から、天文を学ぶ……というより、知識を得ることそのものに恐怖があったということを次第に理解していきます。

少々乱暴に言っちゃうと、アルベルトには「自分が知識を得ようとしたせいで父親が死んだ」というトラウマがあったんですよね。

なので、新たな知識を得る必要のない(既存の知識でもうまいことやっていける)パン屋で、一生を終えようとしていました。

が、お節介で世話焼きなパン屋の店主らのおかげで、再び「学ぼう」という意欲を持つことができ、大学進学を志します

 

そして、好奇心を無理に押さえることをやめたアルベルトは、街を歩く中で聞こえてきた、「地球の運動について」という言葉に、

と思索するのでした。

 

「チ。」がこれまで描いてきた、「異端」とされる地動説などへの「好奇心」。知りたい、と感じる欲求

それが、もう誰にも否定されない、妨害されない、止められないということの象徴として、この「?」で物語が締められる。

圧巻の構成、です。

 

これまでの1~3章に対して実在の国名・人物名を出してきたEXを、並行世界パラレルワールドの話だと解釈する人もいますが、個人的には「ボーナストラック」だなと感じています。

EXはこれまでの1~3章を否定するものでは決してなく、それどころか最後の「?」によってこれまでを統括し、カタルシスを感じさせる結末に仕上げたのではないかと。

だからこそ、名言と呼ぶには本来あまりにも短い言葉ですが、「?」をこのランキングに、どうしても入れたくなったのですね。

 

 

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【チ。地球の運動について】名言集まとめ

 

まとめ
  • 1章の名言(ラファウ、フベルト)について
  • 2章の名言(オグジー、バデーニ、ヨレンタ、グラス、ピャスト伯、新人異端審問官)について
  • 3章の名言(ドゥラカ、シュミット、ヨレンタ、レヴァンドロフスキ、ノヴァク)について
  • EXの名言(アルベルト、パン屋の店主)について

 

以上、独断と偏見で選んだ「チ。」の名言についてでした!

なんだか書き出したら本当にキリがなく、勝手にやってるのにも関わらず、まとめるのが大変でした……笑

でも、この記事で挙げたどの言葉も、本編で読むとより一層、いや二層、三層! 皆さんに刺さるはず

なので、ぜひぜひ、原作やアニメも見てみてくださいね!

 

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