ガンダム作品のTVシリーズでは4作品目になる【機動戦士Vガンダム】。
主人公のウッソが地球に侵攻してきた「ザンスカール帝国」のベスパと戦う物語です。
そんなVガンダムですが、とにかくシリーズの中でも抜きん出て「病んでいる」と呼ばれる作品でもあります。
富野監督も自身の手掛けた作品の中でも不本意な作品のようで、DVDboxが発売された際のコメントに「この作品は見れたものではないので買ってはいけません。」と書いていました。
それはそれで話題性が高まったのかもしれませんが、少なくとも監督自らダメ出しをするいわくつきの作品になっています。
では、なぜダメだと言われるようになったのでしょうか?
今回は、Vガンダムが酷評される理由について解説します↓↓
- Vガンダムがダメな理由
- 監督の精神的苦痛
- 監督の「Vガンダム」への想い
目次
Vガンダムがダメな理由は?
Vガンダムのラストで、ヴィクトリーもV2もほぼ野ざらしになってるの見てて、ウッソもマーベットさんもカテジナさんも戦うことは多分ないだろうなと思える終わりだったと思う。 pic.twitter.com/SmE5pzMdhy
— ちきちきチャンネル (@FateTKTK) October 7, 2022
冒頭では、ガンダムがダメだという内容に触れました。
結論、ダメだと言われる理由は「監督と製作サイドで揉めたから」です。
では、一体何があったのか?
この機動戦士Vガンダムのどこがダメなのか?
口コミも交えながら考察していきます↓↓
ダメな理由は富野監督が本気で作れる体制ではなかったから
でもやっぱり『∀ガンダム』を作ったことを後悔しないです。 むしろ『Vガンダム』の時みたいに、スポンサーの都合だけが優先するという現象を見て、気持ちが悪かったことに比べたらずっとイイ。 当時はそういうスポンサー優先の製作体制に殺されてしまうと、本気で思ってました。
— 富野由悠季bot (@tominomeigen) October 21, 2018
Vガンダムが作られた当時、サンライズがバンダイに譲渡される計画が裏で進んでいました。
なので当時の経営陣は、買収されるにあたり「サンライズの企業価値をあげていく」ことを考えていた訳です。
それを知らなかった富野監督は、直近で製作したZZガンダムよりもさらに薄いスタッフ体制に疑問を持ちます。
ですが「やらざるを得ない」という気持ちで臨んだと監督自身が語っていましたね。
詳しくは「それがVガンダムだ-機動戦士Vガンダム徹底ガイドブック-」を読んでもらえたらと思います。
なので、監督自身がやりたい事を完全に出せる体制ではなかったことが言えます。
ここから富野監督の不満は募っていくことになるのです。
監督は製作会社サイドと揉めて鬱で病んでいた
Vガンダムを製作する以前から、富野監督とサンライズとの関係は良くはなかったみたいです。
以前ライディーンの監督をしていた時、ストーリーの構想が創英社側と食い違い、最終的には監督を降ろされるというエピソードがありました。
この時から、製作会社との対立は繰り返されていたようです。
そこに来て、バンダイへの譲渡問題。
しかも、当時の経営陣から告げられたのが、Vガンダムの製作が終わった後でした。
この事情をまったく知らされずに製作を続けてきたこともあり、監督は激怒したのです。
これまでガンダム作品を通じてサンライズの知名度を上げてきた訳ですから、何も知らされずにバンダイに譲渡を決めた経営陣に怒るのも分かります。
さらに、莫大な譲渡金をもらい去っていったサンライズの経営陣に対する思いなどから、監督は鬱状態になっていったと本人も語っています。
登場人物の死など全体的に暗い作品となった
そして、肝心の作品の中身ですが、こちらは「全体的に暗い展開」です。
特に、カテジナにはみなさんトラウマとなっていることでしょう。
登場時は明るい清楚な雰囲気から「ヒロイン役」として人気でした。
しかし、徐々に病んでいき「狂気的」な振る舞いをするまでに変貌してしまいます。
そんな部分が、この作品の異常さを表す1つに挙げられますね。
あとは、製作時点で紛争が起きていた東欧の情勢を調べられていたそうです。
ですので、戦争の実態や怖さをより理解した上で、やってはいけない事をリアルな描写で伝えたかったのだと考えられます。
当時、夕方5時の家庭で子供が見る番組かと聞かれれば、全く適していません。
それほど内容が暗すぎるということです。
家族で見るアニメとしては、笑いながら見れる内容ではないです。。
ですが、メッセージ性がかなり強い作品ではあります。
とはいえ描写だけなら、鬼滅や呪術よりはまだ良い方ですし、戦争の悲惨さを伝える点で言えば「火垂るの墓」と同様だと個人的には思います。
富野監督の復讐心がキャラや物語に利用されたから
最近Vガンダムにハマってました!
久々にみるとめちゃくちゃおもしろいね!1/144のゾロとか欲しい😭初め見た時のトラウマシーン!オイニュング伯爵の拷問シーンをテレビでやるとかハンパないよね…
あの目を閉じれなくする器具、怖すぎだろ…w
ギロチンはさすがに放送出来なかったんだろうけど pic.twitter.com/iblJWrpc1G— プロフェッサーW(Professor W) (@Professor_Wing0) January 29, 2022
では、なぜ暗い作品に仕上がったのか?
それは、富野監督の負の気持ちが作品にそのまま写されたからです。
作品当初は、子供向けの合体ロボットアニメとしての作風で、主人公ウッソも元気な13歳で描かれていました。
ただ物語が進むに連れて、徐々に作品の雰囲気が重くなっていきます。
ザンスカール帝国の「マリア主義」や「ギロチン」。
さらに、カテジナが拐われたあたりから作品の雰囲気が「戦争」「宗教」といったタブー的な範囲に入っていったように感じます。
製作会社側としては、ガンダムはビジネスとして売れます。
しかし、そのために監督の気持ちをないがしろにしてはいけません。
ここには、監督が描きたいメッセージ性を大事にしたガンダムとの対立構造があったように思います。
その中で、ガンイージに乗る「シュラク隊」が全員戦死。
Vガンダムの性能が敵MSと比べてさほど強くない。
というような、キャラにも機体そのものにも興味が湧かない設定が多いです。
その意図として、あえて子どもたちの欲しがるロボットにならないようにしていたのではないでしょうか?
この製作会社への反抗的要素が、作品を暗く、主要キャラをどんどん戦死させる展開にさせていったのです。
富野監督の買ってはいけませんの意味は?
「富野監督はVガンダムの出来栄えに対し不満を持っていたそうで、2004年にDVD Boxが発売された際には「このDVDは見られたものではないので買ってはいけません」など、製作者とは思えない苛烈なコメントを残しています。」
このエピソード好き pic.twitter.com/Ais13pH8Zk
— 軍曹@Youtubeチャンネル登録1.4万人突破 (@Ten_Gunso) May 22, 2020
2015年のBlu-rayboxが発売された時も、2004年のDVD発売と同じく否定的なコメントを残しています。
監督の言葉通り「このような結果になった」という事をもう少し掘り下げていくと、『その意味』が分かってくる気がするのです。
特にストーリーの最後、母艦の「リーンホースJr」が、艦長を始めとして大人たちだけで敵艦隊へ突っ込んでいくシーンがあげられます。
戦争をリアルに取り上げることを徹底してきたVガンダム。
ただあのシーンだけはリアルというよりも「クライマックス」でよく見る印象を受けました。
個人的にはあのシーンも、Zガンダムでのヘンケン艦長の最後と同じくらい切なくなるシーンなのですが。。
もしダメな部分の1つになるとしたら、戦争のリアルさを追求し続けた作品の終盤で「ストーリー性を重視した展開になった」。
そういった部分が『買ってはいけません』に繋がってくるのかなと考えられます。
なにがダメなのか分からないぐらい名作
本来は、裏の事情さえなければガンダムシリーズの中でも酷評をされることがない「名作」となっていたでしょう。
前述の部分も解釈の1つでしか過ぎませんし、それで作品の全てがダメになるわけではないと思います。
むしろ、今まで守り続けていた「母艦」という戦士たちが帰ってくる場所を、勝つためには武器として使う異常さも「戦争の心理を描く」という点ではリアルです。
他にも、カテジナが最後に故郷に帰るため「盲目になりながら1人で歩いているシーン」が出てきます。
そのシーンもこれまでのベスパでの待遇なども考えると、いきなりな感じで違和感がありました。
ですが、カテジナのこれまでの過ちを「死よりも辛い現実をつきつける」ことで償わせようとしたのではないかとも考えらます。
このように、同じシーンでも受け取る側の解釈で変わるのです。
その解釈の幅がとても広く描かれている所が、Vガンダムが名作と呼ばれる由縁なのではと思います。
ファンからも人気が高く今後も語り継がれる作品
僕が言うのもなんですが、Vガンダムのファンってちょっと狂信的ですよね?🙀 pic.twitter.com/kcLp7VvcER
— しばたみつまる (@mitsumaru_shiva) June 24, 2022
この作品は、全体的に残酷なシーンが多いです。
今までのガンダムシリーズにはなかった描写も多く描かれており、その点では特殊に感じるかもしれません。
ですが、主人公ウッソの戦闘シーンも今までの戦い方を覆す斬新な描き方がされています。
例えば、本来であれば合体してヒト型に変形するのが普通です。
それを、足のパーツだけ相手にぶつけるなんて見たことがなかいですよね?
過去にジオン兵が言っていた「足は飾り」を戦闘で表現しています。
※シャアのジオング
また、Vガンダムの後継機V2ガンダムは「ミノフスキードライブ」を有効活用しています。
今までは戦艦から散布されるくらいしか出番のなかったミノフスキー粒子を「推進力、防御、攻撃」に使う新たな使い方で登場させました。
宇宙世紀最強のガンダムと呼ばれる強い機体でファンからも人気が高く、語り継がれる作品です。
その真意は「自分の作品ではない」ことを示している
上記の解説をまとめると、富野監督は「自分の作品ではない」という気持ちが強いのだと感じます。
サンライズとバンダイの裏交渉について、富野監督がこの作品を製作していた当時知らなかったとお伝えしました。
それを知らされた時の恨みは相当強いものであり、反対に制作者側に失望したことでしょう。
しかし、その反抗心の全てがこの作品に込められていないと言えます。
ただ、製作時からサンライズとの折り合いがつかなかったことや、スタッフが充実していなかった点も加味すると、100%の出来ではなかったことも伺えます。
明らかに、監督の全身全霊の力作とまではいかなかったのでしょう。
当時の監督の精神状態や、経営陣の作品に対する熱量などから「自分の作品に愛着が持てなかった」というのが大きな理由だと感じます。
【Vガンダム】富野監督の作品への想いまとめ
90年代のメンタルがやばかった富野監督が、刀を持ってサンライズに斬り込む寸前まで行ったけど、体力的に無理と判断して断念したエピソードが好きです😯 pic.twitter.com/P94RKPSQJa
— しばたみつまる (@mitsumaru_shiva) July 28, 2021
- ダメな理由は富野監督が本気で作れる体制ではなかったから
- 監督は製作会社サイドと揉めて鬱で病んでいた
- 登場人物の死など全体的に暗い作品となった
- 富野監督の復讐心がキャラや物語に利用されたから
- なにがダメなのか分からないぐらい名作
- ファンからも人気が高く今後も語り継がれる作品
- その真意は「自分の作品ではない」ことを示している
富野監督が言う「買ってはいけません」の真意は、作品の中身に対する思いもありますが、その背景も含まれているのではないでしょうか?
アニメを文化として捉えたい一方で、経営の視点でストーリーにまで関与してくる製作会社側のスタンスに嫌気が差していたのだと思います。
さらに、その意向を汲み取らないと作品が出来上がらないという立場の弱さも痛感したのでしょうね。
そこまで苦労しながら完成した作品が、サンライズの旧経営陣に多額の譲渡金をもたらし、そのお金を持って去っていった訳ですから納得いかないのは分かります。
最後に監督はこの作品について、このように語っています↓↓
「つまり買う奴もおかしいし、売ってる奴もおかしい。」
「だから、これはもう少しなんとかしようよ、お互いに、ということです。」
「ならば一体どうしたらいいんだと考える時に、問題点というのは、全部このVガンダムの中に全部載ってるはずなんです』
このコメントこそ、Vガンダムが世の中に出て全てが分かった今にして伝えたい事なのではないでしょうか?
ここまで様々な切り口で考察をしてきましたが、あくまで解釈であり真実かどうかはわかりません。
また、調べていくうちにもっともっと深い思いが込められているようにも感じました。
なので、この作品で本当に伝えたかったことは「シン・Vガンダム」として庵野監督に映画化してもらえたらいいなぁと思います^ ^