【チ。ー地球の運動についてー】の2章を代表するキャラクター、オグジーとバデーニ。
ラファウらが遺した「石箱」が引き合わせたこの2人は、性格も考え方も全く違い、時には反発し合うこと(大半はバデーニがオグジーを口撃してただけ)もありましたが、だからこそ魅力的な関係でした。
一体、オグジーとバデーニになにがあったのでしょうか?
以下で解説していきます!↓↓
※この記事には「チ。」2章の重大なネタバレが含まれています。ご注意ください。
目次
2人はノヴァクにより処刑される
このシーン、素晴らしいのだ…
ラファウ君が残した研究資料まで燃えてしまって地動説は明らかに後退しているのにこの満足げな表情が地動説は途絶えていないことを確信しているようで感動するのだ… pic.twitter.com/lxeIEroyJy— す(きなものをお)す(すめしたいアラ)イさん (@kofui0709) October 3, 2021
先に言っちゃうと、オグジーとバデーニは「異端」として捕らえられた末に、絞首刑に処されます。
ただし、その死は必ずしも絶望的なものではありません。
死という絶対的な終わりを目前にして、2人は取り乱すこともなく、穏やかに受け入れていました。
何故か? 「地動説は終わらない」=「きっと誰かに託せる」と信じられたからです。
あの超絶ネガティブなオグジーが、徹頭徹尾自分のことしか考えていなかったバデーニが、「自分が死んだ後の世界」を信じられるようになったからです。
2人が死に至った、しかしそれを受け入れられた経緯について、以下で解説していきます。
経緯① オグジーは「異端」によって地動説と出会う
まずオグジーについて軽く説明します。
- 恵まれた身体能力と人間離れした視力を持っている男性(推定20代)。
- 「地球=この世は汚れているので、救いは天国にしかない」という、超絶ネガティブな思考の持ち主。
- 「代闘士」という危険な仕事をしているが給与は低く、世間からも「人殺しの職業だ」と蔑まれている。(上記の卑屈さに一役買っている様子)
- 少年のころから、「星(地球よりも高位にあるもの)」が自分を蔑んでいるように見えるため、夜空を直視できない。
そんなオグジーはある日、同僚のグラスさんとともに「異端」の移送の仕事を請け負います。
後ろの馬車にはノヴァクら異端審問官も乗っていたことから、おそらく、無事についたら「異端」は即処刑だったのだろうと予測できますね。
そう、オグジーらと同じ馬車に乗った「異端」はいわば死刑囚なわけですが……
しかし、何故か全く絶望しているようには見えません。
「異端」は笑みすら浮かべながら、オグジーとグラスさんに語り掛けます。↓
「しかし君は、いや人類は正面から向き合うべきだ。麗しの天国なぞ、ないのかもしれないということに。
だがこの地球は、天国なんかよりも美しいということに。
君だって、本当は信じたいだろ? この星は生きるに値する素晴らしい何かだと。
根拠はある。
今ちょうど見えるそこの山だ。すべての証拠はあの中腹に置かれた『石箱』の中だ――――」
この言葉に、グラスさんは動揺し暴走します。
グラスさんは馬車を奪い、「異端」の言葉通りに「この世の美しさの証明」を求めて、ある場所を目指します――ラファウらが遺した「石箱」のある、山に。
オグジーは完全に成り行きで、それについていきます。
つまりオグジー、この時点では能動性はゼロ。
しかし「石箱」を発見し、これはなにかすごいものだぞと気づいたあと、グラスさんが事故で落命してしまいます。
その際グラスさんは、
「このままでは2人とも死ぬ。ソレはダメだ。あの異端が命を張れたのはきっと託す相手がいたからだ。
人はいつか死んでここを去る。
でも、私が死んでもこの世界は続く。だったらそこに何かを託せる。」
と、オグジーに、「希望」を託しました。
オグジーに遺されたのは、グラスさんからの遺言と「石箱」の存在と、異端から託された「木製の球のネックレス」。
能動性ゼロのオグジーは一人取り残されて、はじめて自分の意志で動き始めます。
経緯② オグジーがバデーニと出会う
グラスさんから「託された」オグジーは、グラスさんの話をもとにある人物を訪ねました。
それこそがバデーニです。
- C教が牛耳るP国では、最上位の身分である「聖職者」の男性(推定20代)。
→その中でもとりわけ優秀なエリートしか入れない「M修道院」所属。
- 実際とても聡明な頭脳を持っているのだが、傲慢かつ協調性が皆無のため、周囲から煙たがられ、田舎村に左遷された。
→左遷前のトラブルで両目を焼かれており、片目を失明。奇跡的に残った右目も弱視に。
- 基本的にすべての他人(同僚、信者を含む)のことをバカだと思っているため、すぐ「は?」って言う。
- でもビックリすると吐いたり、転げ落ちたり、「よし! よし!」と言いながら壁を殴ったりする
→冷静そうに見えて、かなり挙動が変おもしれー男
グジグジ優柔不断なオグジーに対しバデーニは、歯に衣着せぬ物言いでガンガン物語を進行してくれるためそういう意味でもありがたいキャラクターでした。
……バデーニは自分の優秀さに自覚的であり、その優秀さを世間にひけらかしたい・認めてもらいという、自己顕示欲が強い人間です。
しかもそれを隠すどころか、むしろ積極的に口にする傲慢さを持っているので、上司や同僚からは常に煙たがれていました。
そして左遷された田舎村で、イライラしながら毎日を送っていたのですが、ある日オグジーが訪ねてきて、「石箱」の存在を告げられ、これまでの「常識」が一変。
オグジーを助手とし、地動説の研究をはじめます。
……いや、バデーニ曰くオグジーは対等な共同研究者などではなく、あくまで「雑用係」らしいんですけどね。笑
経緯③ オグジーの心境に変化
バデーニは「石箱」の中身の意味、そして価値を即座に理解しました。
そしてあの「異端」と同じように、
「この石箱は、人類に説いている。
もしかしたら我々の住む大地は、醜い底辺として切り離されてなんかなく、
疾うの昔からあの(天界の)美しさの一員だったのかもしれない。」
と、オグジーに告げます。
そしてこの言葉は、オグジーの人生観を大きく変えることになりました。
なにせオグジーはこれまで、「地球は天界に比べて劣っている」と聞かされていたから、「天界に蔑まれているような気がして」夜空を見られなかったのです。
しかし、バデーニという神職者=自分よりずっと偉い存在が、「この世界は穢れておらず、美しいものなのではないか」と言ってきた。
だからその日、オグジーは久しぶりに、夜空を直視することができ――これをきっかけに、夜空への恐怖心を克服。
その卓越した視力を、存分に天体観測に使うことができるようになったのです。
オグジーの意識の変化その①
- 夜空へのトラウマを克服
――その結果オグジーは、地動説の根拠足りうる「満ちた金星」の観測に成功し、ピャスト伯(天文学の権威)の協力と、彼が培った史料を獲得します。
が、文字が読めないオグジーにとっては、その史料ではなく、ピャスト伯の研究姿勢そのものが、敬意の対象でした。
ピャスト伯は、「完璧な天動説」の完成を目指して人生を天文に捧げてきた老年の男性です。
しかし、オグジーが「満ちた金星」を見たことで、地動説を信じざるを得なくなりました。
資料室の鍵を渡すとき、自分の人生の目標が誤りだったと知って、ピャスト伯は幼子のように号泣します。
それでも、「真理」のためにバデーニに鍵を渡したのです。
「――この鍵に、この鍵の先に何年分の人生が積み重ねられていると思う?
2000年だ。
もし……過去の積み重ねの先に答えがないなら、我々にとって真理は無駄だったかもしれん。
しかしたとえ…誤ちでも何かを書き留めたことは、歴史にとって無意味ではない。
――と、願ってる。」
その姿が、言葉が、オグジーの心に響きました。
オグジーの意識の変化その②
- 一生を費やした研究の結果が「間違い」でも、無意味ではない。
→他者の存在によって、自分の世界が更新されることもある、と知る
また、ピャスト伯とのパイプ役になってくれた、ヨレンタさん(ピャスト伯のもとで働く才女)とのやり取りの中でも、オグジーは影響を受けます。
バデーニ、ピャスト伯、ヨレンタさんは、全員当たり前のように文字の読み書きができます。
それができないオグジーには、みんなが何をやっているのか、完全には理解できていません。
そんなオグジーがヨレンタさんに「文字が読めるって、どんな感じなんですか?」と訊ねるシーンがあります。
するとヨレンタさんは、真摯にこう返しました。↓
「文字は、まるで奇蹟ですよ。
アレが使えると、時間と場所を超越できる。
私たちの人生はどうしようもなくこの時代に閉じ込められている。だけど、
文字になった思考はこの世に残って、ずっと未来の誰かを動かすことだってある。」
この言葉をきっかけに、オグジーは文字を習い、「本」を書くことを決めます。
オグジーの意識の変化その③
- これまでグラスさんに任せていればよかった「文字」について興味を持つようになる
→「文字」のすごさを知り、自分が体験した「感動」を物語として残す気になる
バデーニ、ピャスト伯、ヨレンタさん、そしてグラスさんや、あの「異端」が、少しずつ、しかしはっきりとオグジーの意識を変えていったのでした。
経緯④ オグジーが自らの意思で戦う
しかし、オグジーとバデーニは地動説が完成した直後に、異端審問官ノヴァクに目をつけられてしまいます。
かつてオグジーが「異端」から、そしてグラスさんから託された「木製の球のネックレス」が、皮肉なことに、ノヴァクの疑惑に決定打を与えてしまうんですね。
そして疑われていると分かるや即、地動説の史料を燃やすバデーニ。
バデーニはあくまで「自分の名前で地動説を発表すること」、翻っては「自分の名前を歴史にのこすこと」のみにしか興味がなかったので、「資料は独占するし誰かに渡す(託す)気はない」んです。
しかしそんなバデーニに、オグジーは異を唱えました。↓
「あ、あまり他人を排除しすぎると、間違いに気づきにくくなるのでは…? それは研究にとってよくないんじゃ……
ピャスト伯は自ら”自分が間違っている可能性”を信じ、それを受け入れた。
そのピャスト伯の態度こそが、『自らが間違っている可能性』を肯定する姿勢が、学術とか研究には大切なんじゃないかってことです。」
「むしろ反論や訂正をされることが託すことの、本質というか…
自分の思い通りにいかない誤解とか事故とか予想外の存在とか、
そういう他者が引き起こす捩れが、現状を前に向かわせる希望なのかもしれない。」
これをオグジーが言うんですよ!!!
早く天国に行きたい、生まれてきてスミマセンと臆面もなく口にしていたオグジーが、文字を読む気もなかったオグジーがですよ!?
草場の陰から聞いてますかグラスさん!!オグジーが「希望」を口にしました!!
オグジーの意識の変化その④
- 自分より賢い相手(バデーニ)にも、臆さず意見を言えるようになる。
→異端やグラスさんが口にしていた「希望」、「託すこと」について、理解し始める
が、このオグジーとバデーニのこの問答の直後、ノヴァクが異端審問官らを引き連れて馬車でやってきます。
オグジーの視力だけが、それを事前に捉えることが可能でした。
だからオグジーは時間稼ぎのため、一人剣を手に馬車の前に立ちふさがることを決めました。
バデーニは止めます。
オグジーの行動が、理解できないからです。
聖職者(異端審問官)に盾突くということは、C教の教えでは「地獄に堕ちる」ことと同義。
バデーニはそう指摘しました。
「早く天国に行きたい」ということだけを願っていた初期のオグジーでは、絶対に選ばない選択のはず。
それに、オグジーはこう答えました。
「――前、なんで本なんか書くんだって聞かれましたけど、
それは俺が地動説の意味を知った時、多分、感動したからです。
そして、それが日に日に強くなってる。
つまり俺は、ちょっと前までは早く地球を出て天国へ行きたかったけど、今はこの地球を守る為に地獄へ行ける。」
……オグジーはロクな教育を受けてこなかった「下等市民」です。
この変貌を、もしかしたら成長とは言ってはいけないのかもしれない。
麻疹のようなものであり、もしかしたら非難されるべきものなのかもしれません。
しかしバデーニは、すべての言葉を飲み込んで、ただ追っ手が迫って一分一秒が惜しい中、オグジーに祝詞をあげて祝福しました。
これがバデーニという不器用な人間のできる、オグジーへの精一杯の敬意の示し方だったように思えます。
聖職者と代闘士。
合理的な知識人と非合理的な下等市民。
対等な会話はほぼなく、居丈高なバデーニと卑屈なオグジーばかり、読者は見てきました。
そんな二人が互いに敬意を持つに至ったシーンが、ここで描かれています。
経緯⑤ オグジーとバデーニがともに処刑される
「異端」輸送時、グラスさんの暴走によって裏切り者と判断され、ノヴァクによって粛清されそうになったオグジー。
その際は、ノヴァクの力量を正確に読み取って「勝てない、殺される」と判断し、即座に降参しました。
しかし、今のオグジーは、「地動説」を守る為なら地獄に堕ちる覚悟がある。
バデーニへ切った啖呵は嘘ではなく、オグジーは死ぬ覚悟をもってノヴァクと斬り合い、そして制しました。
ただ残念ながら、異端審問官の増援が間に合ったことによりオグジーは捕えられます。
そして、一週間後、収監所の中でバデーニと再会します。
そう、オグジーが決死の想いで逃がしたはずのバデーニも捕まっていたのです。
本来教会側の人間だったバデーニは薄々、逃げ切れないと悟っていたようであまり驚きはなかったようですが。。
地動説の研究結果を含め、全ての情報はバデーニが持っています。
バデーニに情報を吐かせるために、バデーニの目の前でオグジーが拷問にかけられます。
理不尽。。。
オグジーがどんな目に遭っても、バデーニは「地動説の資料は全部燃やした。だからこれ以上の情報はない、拷問は無意味だ」と言い張ります。が。
オグジーの目が傷つけられようとしたとき、はじめて「ああ。全部演技だ」と白状します。
バデーニは「石箱」の中身を保存していたのです。
バデーニの意識の変化その①②
- 文字は限られた知識人のみが使うべきだと思っていたが、オグジーの「本」を読み、裾野を広げることの意味を知る
- 地動説を使って「自分の名を残す」のではなく、地動説の完成を誰かに「託す」ことを決める
→石箱を廃棄せず、守ろうとした
そして、2人は絞首刑にかけられることになりました。
良く晴れた夜空の下、揃って絞首台に立ち首に縄をかけられた2人は最期の会話を交わします。
その様子に死への恐怖はなく、むしろ穏やかに自分たちが死んだ後の世界について静かに語り合いました。
そして足元の床が開き、2人の首に縄が食い込み首の骨を折って絶命。
その後、死体は火にかけられたそうです。
バデーニの意識の変化その③
- 「石箱」や自分が構築した理論ではなく、オグジーの本を復元させる賭けに出る
オグジーの意識の変化その⑤
- 地動説のために地獄に堕ちるつもりだったが、夜空を見ていると逝くところは案外天界なのかもと思うようになった
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3話(単行本1巻まで)の放送が終わった今1巻の表紙を見て欲しい。
内容もさながらこんなに完璧な第1集はなかなか珍しい。
しかし,どんな状況でも観測することをやめないこのラファウはただただかっこいいな#チ球の運動について pic.twitter.com/ycyLKvKbRq
— チ。-地球の運動について-について(非公式ファンアカウント) (@chi_chikyu_) October 12, 2024
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【チ。地球の運動について】バデーニとオクジーの死因まとめ
『チ。-地球の運動について』5巻読了。やはりこの漫画の主人公は合理性を超越した美しさだと思う。人によってそれは信念だったり、自由であったりするのだろうけど。
拷問の残虐的なシーンもあるのに、オクジーやバデーニが見た、空の美しさや輝きをずっと見せられている感覚がある。面白すぎ。 pic.twitter.com/MUTUVZGWiL— おがさん(ナンバーナイン セールスプランニング部所属) (@basil_ko84) October 1, 2021
- オグジーとバデーニは拷問され、「石箱」あのありかを吐いたあと、絞首刑にかけられる
- しかしそこに至るまで2人の意識に変化があり、地動説を知ったことに後悔はなかった
- 最期は満天の星空の下、笑顔で逝く
以上、オグジーとバデーニの最期についてでした!
むっちゃ語っちゃいましたね。笑
それから、今回記事を書くために読み返しましたが、台詞や構図のリフレインなど「チ。」の完成度の高さに改めて驚かされました。
原作は全8巻とコンパクトにまとまっています。アニメから知った方も、是非漫画のほうも読んでみてください!
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